タリフとは?|実行関税率表の見かた入門

タリフとは運賃表(または料金表)の意味ですが、物流用語としては各利用輸送機関の運賃率表と、実行関税率表の2つの意味があります。

<運賃率表>
地方運輸局がそれぞれ定めている「標準運賃表」のことを指しており、そこには単位当たりの賃率が表記されています。
運送業者は事業開始時に、この「標準運賃表」により決定した運賃を届け出ることが義務付けられています。
<実行関税率表>
関税は、商品を海外から輸入するときにかかる税金です。
輸入品の量や品目により関税額も巨額となる場合があります。
そのため、関税率表を使ってあらかじめ概算金額を計算しておくことをお勧めしますが、毎月税率が変わることや輸入方法によっても関税額が変わることなどから計算は困難です。

この記事では、「実行関税率表」の基本的な知識・表の見方・各項目のポイントなどを解説していきます。

目次

実行関税率表とは

日本に商品を輸入する際の「関税率は何%?」これを調べるための表が「実行関税率表」です。

関税は「商品の原産国」「価格」「特恵の有無」によって細かく決められています

<例えば>

  • アメリカ産のトマト:2%
  • イギリス産のキュウリ:3%
  • ベトナム製造の靴:10%

関税率は、輸入する「品目」「原産国」により変わり、これらの品目と税率を一つの表にまとめているのが「実行関税率表」です。

実行関税率表の見方

実行関税率表には原産国と品目、関税率の組み合わせが約1万品目あり、輸入者はこの表から最も適した関税率を見つけ参考にできます。

実際の「実行関税率表」

実際にチリ産のスパークリングワインの関税率を調べていくことで、「実行関税率表」の見方を解説します。

1.税関のホームページを開く

図1

まず、税関のホームページを開いてください。(https://www.customs.go.jp/index.htm)

次に、ホームページ内の「輸出入の手続きを調べたい」➡️「輸出入手続きトップ」と順次進んでください。

2.実行関税率表を開く

図2

「輸出入手続」のページから「実行関税率表」を選択すると、「輸出入統計品目(実行関税率表)」に移ります。

実行関税率表は頻繁に改定されるので最新のものを選択することに注意してください。
最新のものは、一番上に表示されています。

3.21部97類の中から選択する

実行関税率表は第1部「動物(生きているものに限る。)及び動物性生産品」から第21部「美術品、収集品及びこつとう」の中に、さらに詳しく第1類「動物(生きているものに限る。)」から第97類「術品、収集品及びこつとう」まで細かく分かれています。

ここでは、チリ産スパークリングワインについて調べます

図3

チリ産スパークリングワインはアルコールですので、アルコールを探すと第4部の「調調製食料品、飲料、アルコール、食酢、たばこ及び・・・」の中の第22類「飲料、アルコール及び食酢」を発見することができます。

そして、ここで画面に向かって右にある「税率」を選択してください。

4.税率が表示される

図4

税率表の中から「ノンアルコールビール・ビール・ぶどう酒・・・」の中からスパークリングワインを見つけることができます。

スパークリングワインの欄を見ると、基本「201.60円/l」・WTO協定「182円/l」・特恵「145.60円/l」・特別特恵「無税」、その他にも経済連携協定(Tariff rate:EPA)というものもあります。

それではチリ産のスパークリングワインの関税率はどれが当てはまるのでしょうか?

解答は「無税」ですが、もう少し詳しく表の見方を解説します。

図5

実行関税率表の用語説明

  • 統計番号
  • 品名
  • 関税率
  • EPA

と割り振られています。

統計番号H.S.codeとは

実行関税率表の統計番号には「HSコード」と記載されています。

「HSコード」は、品目に数字を割り当てたコード表に記されている番号です。

世界共通(日本をはじめ153カ国およびEUが加盟)のコードですので、HSコードを伝えるだけで対象の品目を理解できます。

ここで例とするスパークリングワインの「HSコード」は「2204.10」です。

(注)各々の品目「HSコード」については「税関の輸出統計品目」からお調べください。https://www.customs.go.jp/yusyutu/2022_01_01/index.htm

HSコードの見方

  • 10.06.10.090.0もみ
  • 10.06.20.090.4 玄米
  • 10.06.30.090.1精米(研磨又はつや出ししてあるかないかを問わない)
  • 10.06.40.090.5 砕米

HSコード6桁目より後の番号については、各国が国内法に基づいて統計細分等の番号を設定することができます。日本では第7~9桁目を輸出入統計細分

引用:日本貿易振興機構(ジェトロ)(https://www.jetro.go.jp/world/qa/04A-010701.html)

つまり、「米(10.06項)」は、「10(もみ)」「20(玄米)」「30(精米)」「40(砕米)」までが世界共通コードで、それ以下は国内法で定めた統計番号(090.0・090.4・090.1・090.5)です。

関税率(Tariff rate:タリフレート)とは

  • 基本
  • 暫定
  • WTO協定
  • 特恵
  • 特別特恵
  • EPA

基本関税率は国が定めた基本となる税率です。
チリ産スパークリングワインの場合は図5から見ると…

図5

201.60円/lと定められています。

暫定税率はチリ産スパークリングワインでは定められていませんが、国が一定期間暫定的に定めるものです。

ここでは、201円のところを「100円/l」にしようとか、逆に「500円/l」にしようとか、国の政策上必要に応じて決めるものです。

WTO協定とは

WTO(世界貿易機関:World Trade Organization)は、164の国と地域が加盟する機関で、貿易に関連する様々な国際ルールを定めています。

WTO税率が適応されるのは原産地であり、積出港ではありません

チリ産スパークリングワインがアメリカの港から積み出されたとしても、チリがWTOの加盟国であるか否かが問題となります。

特恵・特別特恵とは

 一般特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)

一般特恵関税制度は、開発途上国の輸出所得の増大、工業化と経済発展の促進を図るため、開発途上国から輸入される一定の農水産品、鉱工業産品に対し、一般の関税率よりも低い税率(特恵税率)を適用する制度です。

2022年4月1日現在、以下一覧のとおり126か国5地域が特恵受益国として指定を受け、告示されています。

特別特恵措置(LDC特恵措置)|LDC(後発開発途上国)に対するLDC特恵措置

日本は1980年4月からLDCに対する特別特恵措置を導入しています。

特恵受益国及び地域のうち、LDC45か国に対して、特恵対象品目全てに加え、LDCにのみ適用される特別特恵対象品目(2,430品目)について、無税の措置を供与しています。

(注)特恵受益国及び地域・LDC45か国および特恵対象品目について詳しく知りたい人は「外務省、外交政策、特恵関税制度(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/t_kanzei/index.html)をご覧ください。

EPAとは

EPAとは、「Economic Partnership Agreement」の略称で、「経済連携協定」とも呼ばれます。
特定の国や地域同士での貿易や投資を促進するため、主に以下の内容を約束する「条約」です。

<EPAに含まれる約束の例>

  1. 「輸出入にかかる関税」を撤廃・削減する
  2. 「サービス業を行う際の規制」を緩和・撤廃する
  3. 「投資環境の整備」を行う
  4. 「ビジネス環境の整備」を協議する
(注)EPAについて詳しい情報は「財務省、経済連携協定(EPA)等」をご覧ください。(https://www.mof.go.jp/policy/customs_tariff/trade/international/epa/index.htm)

タリフレートをまとめると

基本税率国内産業の状況等を踏まえ長期的な観点から設定される税率。関税定率法で定められている。
暫定税率特殊事情がある場合に暫定的・弾力的に適用される税率。関税暫定措置法で定められている。
一般特恵税率
(GSP税率)
開発途上国で、特恵関税の供与を希望する国のうち、わが国が当該供与を適当と認めた国(特恵受益国)を原産地とする輸入貨物に対して適用される税率。実行税率(基本税率(暫定税率が設定されている品目の場合は暫定税率)と協定税率のいずれか低い税率)よりも低い税率を供与。特恵税率の適用には、原則として、特恵原産地証明書の提出が必要。関税暫定措置法で定められている。
特別特恵税率(LDC特恵税率)特恵受益国のうち、後発開発途上国(LDC)を原産地とする輸入貨物に対して適用される税率であり、税率は全て無税。また、LDCを原産地とする一般特恵対象品目を輸入する場合も、LDC特恵税率が適用され、無税となる。LDC特恵税率の適用には、原則として、特恵原産地証明書の提出が必要。関税暫定措置法で定められている。
WTO協定税率(協定税率)WTO加盟国を原産地とする輸入貨物に対し、それ以上の関税を課さないことを約束(譲許)している税率。便益関税受益国及び二国間協定により最恵国待遇を認めている国に対しても適用される。WTO協定の譲許表で定められている。
EPA税率日本と特定の国との間で結ばれた経済連携協定(EPA)で定められている税率。EPA税率を適用するためには、当該協定(EPA)の原産地証明書の提出が必要である。

チリ産スパークリングワインの税率は

チリ産スパークリングワインは、実際の税率はどうなるのでしょうか?

  1. 後発開発途上国 特恵受益国及び地域 133(128か国、5地域)
    https://www.customs.go.jp/tetsuzuki/c-answer/imtsukan/1504_jr.htm
  2. WTO加盟国・地域一覧
    https://www.kanzei.or.jp/refer/wto.htm

チリを①②の順に調べていくと、①の「後発開発途上国 特恵受益国及び地域」にチリは入っていませんが、②の「WTO加盟国・地域一覧」にチリは加盟しています

しかし、下の図6のEPAにもチリを見つけることができます。

図6

チリ産スパークリングワインの関税率は…

  • WTO協定税率:182円/l
  • EPA関税率:無税

2つの税率が実行関税率表から読み取れました。

それでは、「WTO協定税率」と「EPA」のどちらが優先されるのでしょうか?

税率決定までの流れ

「WTO」と「EPA」のどちらが優先されるか?後発開発途上国(LDC)である場合は?など税率決定に関しては「税関、輸入統計品目標(実行関税率表)」のなかの税率決定までの流れをご参照ください。https://www.customs.go.jp/tariff/mikata/mikata2.htm

税関の実行関税率表の税率決定までの流れを見ると、「WTO協定税率」よりもEPA税率が低い品目である場合は、EPA税率を適用するとなっています。

チリ産スパークリングワインの場合は「WTO協定税率:182円/l」に対して「ERP税率:無税」となっています。

よって、チリ産スパークリングワインの関税は無税となります。

一般的に税金は、より安い方が採用されますが、特例もあり得ますので確認が必要となります。

まとめ

この記事では、チリ産スパークリングワインを例に実行関税率表(タリフレート)の見方を解説してきました。

インターネット上ではタリフを検索できるツール「webタリフ」(日本税関)なども登場しています。

webタリフでは「原産国」と「HSコード」を入力すると該当する「実行関税率表」が表示されます。

また、サンプルであるとか個人貿易であるとか小ロットの場合は「簡易税率」が適用されますので注意が必要です。

以上、タリフレートの基本的な見方入門でした。

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