横持ちコストとは?発生する背景やデメリットについても紹介

What is horizontal cost?

拠点が分散することで横持ちコストが大きくなってしまうことを知っていますか?

この記事では「横持ちコスト」について解説していきます。結論、横持ちコストは自社間の移送のことで無駄とされることが多いです。

横持ちを検討する際、わかりづらい「横持ちコスト」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。

その他にも「横持ちコストのデメリット」の説明や、「横持ちコストが発生する背景」について説明していきたいと思いますので、ぜひこの記事を読んで横持ちコストについて知っていただければ幸いです。

また「物流コスト」について知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。

目次

横持ちとは?

横持ちとは?

物流業界で度々耳にする「横持ち」とは、「工場」「店舗」「支店」などの社会の拠点ごとに、商品を移行(輸送)することを言います。
一般的には、社内に置いて拠点間輸送の時に用いられることの多い言葉ではありますが、拠点内の作業スペース間の貨物移動の時に使われることもあります。

物流において、いちばんの理想は、全ての物量を一括で一箇所に保管できることです。しかし、以下のような理由で予定外の場所に製品などの輸送が必要な場合があります。

  • 売上の繁忙期、季節波動、社会情勢の変動によって、自社の設けている保管キャパシティを超えて在庫拠点を増やして移行する
  • 自社の設けている工場にて流通加工機能が足りない場合は、他社の工場に備わっている流通加工技術に頼るために移行する

横持ちは、本来必要のない移行で輸送コストが発生するので、可能な限り輸送回数を減らすために工夫することが大切です。

横持ちコストとは?

横持ちコストとは?

横持ちコストとは、横持ち輸送において発生した費用のことを指します。工場から物流倉庫・保管拠点に移行させたり、物流倉庫・保管拠点から支店や店舗に移行させたりする際に発生するコストのことです。

ECサイトなどでは、地域によって即日配達・翌日配達などができるのですが、それは在庫倉庫を全国各地に拠点として構えているからです。複数の拠点を構えることで、在庫の適正配置や配達までの時間を短縮できるのがメリットです。

その一方で、工場からの移行が分散されたり、拠点間での在庫移動などで「横持ちコスト」がじわじわと増加し、経営圧迫の原因にもつながっているのが現状です。

横持ちが必要になる背景とは?

横持ちが必要になる背景とは?

横持ち輸送が必要になる背景は、主に3つあるので見ていきましょう。

流通から加工まで行える大規模倉庫が少ない

自社で何かの製品を生産するとして、流通から加工まで全てを同じ拠点で行うためには大きな敷地が必要で、工場費用も膨大なものになります。
そのため、よっぽどの大手企業でない限り、全ての生産から流通までの過程を一つの場所で完結させることは不可能です。

よって、大規模倉庫を設けることができずに、生産工場、加工・流通、保管倉庫などの拠点を複数に分ける必要があり、その拠点間を横持ち輸送する必要が出てくるということです。

拠点を集約すると災害リスクが高くなる

拠点を集約すると災害リスクが高くなる

流通から加工まで一貫して行える大規模倉庫は、横持ちコストがかからない分、無駄な転送が減るため、コスト削減という点においてはメリットがあります。
しかし、物流拠点を大規模倉庫の一箇所に集約してしまうと、リスク分散ができません。

例えば、地震や津波、台風などで停電したり、倉庫が機能しなくなってしまったとすると、全ての流通から加工までの作業を100%ストップさせることになるのです。

もしも、日本国内の複数のエリアに分散して拠点を設けておけば、一つの拠点が機能しなくても残りの拠点で生産・流通が可能です。完全に拠点の機能が停止してしまうと、物流業界全体に膨大な損害と支障をきたすことになるので、災害リスクを分散させるという理由で複数の拠点を設け、横持ちをする考えもあります。

生産量に応じて柔軟な対応がしやすい

横持ち輸送を行うことができれば、繁忙期などで通常よりも多くの供給があった場合でも、柔軟に対応することができます。
例えば、自社工場ないで「流通」「加工」「保管」全てを行っていた場合、どこかが100%になってしまうと、それ以上は供給をストップさせるか、新たな工場や倉庫を借りて横持ち輸送する必要があります

ただ、初めから複数の拠点を持っていれば、在庫管理や供給量予想などを事前に行えるので、最小限の横持ち輸送で製品の移行が行えて無駄を省くことができます。

横持ちのデメリットとは?

横持ちのデメリットとは?

横持ちのデメリットは主に2つあるので見ていきましょう。

ロスタイムが多い

輸送業に関しては、拠点内外の作業をできる限り効率よく回して最短ルートで輸送することが理想ですが、横持ちが発生すると移動距離が伸びてしまいます。移動距離が伸びると、荷物の積み替えが必要であったり、横持ち輸送するための大体トラックが必要になります。

よって、横持ちが増えれば増えるほど、輸送の時間が発生しロスタイムにつながるというデメリットが発生するのです。さらに、横持ちで輸送回数が増えることによって、破損や製品の劣化などのリスクがあり、修理などが必要になれば、加えて時間がかかってしまいます

ロスタイムを減らすためには、輸送経路で短縮できるところがないかを調べたり、不要な作業工程が発生していないかの見直しをしてみましょう。

中間コストが高くなる

中間コストが高くなる

横持ち輸送が必要になれば、その距離の輸送をするためのトラックの燃料代やドライバーの人件費が発生します。
さらに、拠点地点での荷物の積み替えや倉庫内での人力での移動を要する場合は、そこでも人件費が追加で発生するため、企業が負担するコストが増えて負担に直結します。

移動距離が長くなるほど、トラック運転手の時間給は高くなる給与形態なので、横持ち輸送においての距離や重さをできるだけ抑えられるように管理をすることが大切です。

下請け会社に委託している場合、追加請求されるケースもあるので、事前に横持ち発生時の対応なども確認しておくことを忘れずにしてください。

横持ちコストが発生しやすい場合とは?

横持ちコストが発生しやすい場合とは?

横持ちコストが膨れ上がってしまう状況には、いくつかの理由があるので見ていきましょう。

複数の拠点に倉庫が分散している

流通から加工、保管倉庫まで多岐に渡って複数の拠点を持っている場合、横持ちコストが上がりやすくなってしまいます。
基本的には、「工場から倉庫」「倉庫から支店や店舗」のように直結して最短ルートのみの輸送が理想的で、無駄なコストを出すことなく済みます

しかし、複数の拠点に倉庫が分散している場合は、在庫管理の問題や流通・加工などの過程において逐一、横持ち輸送が必要になるのです。

横持ち輸送をするとなれば、さらにドライバーの確保、燃料費、各拠点にて人員が必要になるので、人件費・燃料費などが加算され、横持ちコストが膨れ上がります。

在庫が多い

在庫が多い

製品によっては一度に大量生産した方が安上がりの場合があり、供給量を一気に増やしてコストパフォーマンス重視の生産をする企業があります。確かに、在庫があれば受注後にすぐ納品できたり、品切れを回避できたり、多くの消費者に製品を届けることができるので、一見利益が多いように見えます。

もちろん、市場調査などを念入りに行った上での在庫確保は問題ありません。しかし、多めに発注することで安く生産してもらえるという部分だけにメリットを感じて、供給してしまうと、「過剰在庫」につながる可能性があるので注意をしましょう。

過剰在庫とは?

過剰在庫とは、本来の需要量を大幅に供給量が上回ってしまったために、倉庫保管が長くなってしまうことです。

倉庫で在庫保管をする場合、保管管理が徹底されていないと製品の劣化に繋がったり、商品価値の定価に直結します。
倉庫の拠点が複数あり、地域ごとの需要に合わせて在庫の製品を移行するとすれば、その度に横持ちコストが発生します。

横持ち輸送をすることで柔軟に製品を流通させることができる反面、横持ち輸送の回数が増えるほど、製品の破損のリスクや劣化に繋がるので、あまり頻繁に行うことはお勧めできないのです。さらに、在庫の保管期間が伸びた場合、製品として売りに出せなくなると、横持ち輸送で処理場に移行する必要が出てきます。

このように、在庫を多く持つことは、しっかりと売り切ることができれば問題ないのですが、過剰在庫になると、横持ち輸送が増加し、コストが発生する可能性につながります

交通渋滞が起きやすい地域に立地している

交通渋滞が起きやすい地域に立地している

横持ち輸送の場合、下請け業者に依頼するとしても、トラックドライバーに依頼するとしても、輸送費には、燃料代と人件費が発生します。
その横持ちコストの輸送費をできるだけ抑えるためには、交通距離を減らしたり、物量を減らしたり工夫ができるほか、短い時間で移行できるアクセスの良さが必須です。

基本的に、横持ち輸送のコストは、限られた時間を越えた場合に、追加料金が発生します。そのため、いつも渋滞している道が輸送場所だった場合、毎度時間がオーバーし、その度に追加料金を支払う必要が出てくるのです。

さらに、配送経路で渋滞がひどい場合は、別の車両で荷物を引き取り、配送することもあります。すると、その代替トラックに対する支払いが発生するので、横持ちコストが積み重なっていく構図が出来上がってしまうのです。

横持ちコストを削減するには?

横持ちコストを削減するには?

横持ちコストは、工夫をすることで削減できるので、具体的な方法を見ていきましょう。

拠点を1つにする

横持ち輸送の回数が増えるたびに、コストが増加していくため、可能な限り物流拠点を一箇所に集約することで、横持ちコストを抑えることができます。

例えば、生産の拠点から店舗や支店に直接配送することができれば、配送までの間をどこかの倉庫に保管する必要がなく、「生産拠点から倉庫」「倉庫から店舗」という横持ちコストを「生産拠点から店舗」と割愛できるということ。

このように拠点を集約することで無駄な移動を減らせるkと尾ができて、横持ちコストを抑えられるのです。そのため、横持ちコストが膨れ上がっている現状の場合は、拠点が分散していないかを見直してみましょう
もしも、拠点が分散されている場合は、機能集約でコストシミュレーションをして回収できる見込みがあれば、拠点を集約するための投資を検討するのもいいでしょう。

在庫を多く抱えない

在庫を多く抱えない

余剰在庫が増えると、その分保管スペースが必要になり、物流拠点を増やすことになります。
つまり、余剰在庫が増えるほど、横持ち輸送が比例して増えるので、在庫管理をしっかりと行うことで横持ちコストを削減することが期待できます

需要と供給を見極めて、在庫量が適切であるかどうかの生産管理を徹底してみてください。社会情勢や自然災害などの外的要因は予測することが難しいですが、毎年の売上状況などをみて、繁忙期がいつからいつまでか把握し、最低な生産量の維持に努めましょう。

ITで倉庫内業務を効率化する

ITテクノロジーを利用することで、倉庫内の「整理」「ロケーションの最適化」「入出荷時間の調整」「スタッフ確保」「業務のマニュアル化」などが管理されるので無駄を減らすことができます。
横持ち輸送が必要な場合でも、倉庫内の運搬などから費用が発生するため、少しでも横持ちコストを減らすためには、人件費や輸送に要する時間を短縮できるような工夫が必要です。

ITを駆使することで人が管理する以上に最適化・効率化が測れるので、ITの導入を検討するのもいいでしょう。

WMS(倉庫管理システム)などを使えば、全て電子データとして保管されるので、倉庫に移した際に、在庫数の確認などを人の手で行う手間が省けます。

横持ちと縦持ちの違いとは?

横持ちと縦持ちの違いとは?

「生産拠点から保管拠点」「保管拠点から物流拠点」のように拠点間で行う輸送のことを横持ちと言います。
一方、「横持ち」に対して「縦持ち」という輸送方法があり、縦持ち輸送の場合は、建物の上階と下階や地上間で荷物を行き来させる上下輸送の方法を指します

一般的には、高層ビルやマンションなどの建物で発生するため、エレベーターや階段が使用できることがほとんどです。
しかし、場合によっては上下移動する設備が整っていないこともあり、主に建築現場などでも発生しています。

横持ちコストについて理解しよう

横持ちコストについて理解しよう

この記事の結論をまとめると、

  • 横持ち輸送とは、社内の拠点間を移動させる輸送方法のことを指す
  • 拠点が分散していたり、余剰在庫が増えた際に横持ち輸送が必要になり、輸送が増えるほど横持ちコストが高くなる
  • 拠点を集約したり、在庫管理をしたり、ITを駆使することで横持ちコストを削減できる
  • 横持ち輸送以外に、上下間の移行をする「縦持ち輸送」という方法もある

ということが分かりました。

街中を走っている大型トラックなどは、横持ち輸送をしている場合が多く、物流業界には必要不可欠な存在です。ちょっとした理由で横持ちコストは変動しやすいので、常に生産管理を徹底することでコスト削減に繋がるので、見直しや工夫をしてみてください。

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