物流を管理するうえで重要な考え方に「配送リードタイム」というものがあります。
配送リードタイムとは商品が発送されてから到着するまでにかかる時間を測った時間です。
配送リードタイムを短縮することでコスト削減や顧客満足度向上といったメリットがあります。
この記事では配送リードタイムに関する計算方法の説明および配送リードタイムを短縮する方法を解説します。
配送リードタイムを短縮してコスト削減を目指しましょう!
<この記事で分かること>
・配送リードタイムの定義とは?
・リードタイムはどうやって計算する?
・リードタイムを短くするメリットとは?
・リードタイムを短くする方法を知りたい!
リードタイムとは?計測開始時点ごとに定義が異なる
リードタイムとは商品やサービスを発注してから納品されるまでの時間や日数を指すものです。
主に物流の現場でよく用いられます。
リードタイムには時間を計測する「始点」と「終点」があります。
始点と終点をどこに置くかによってリードタイムの時間は変わってくるものです。
ここでは、生産や物流の現場で用いられるリードタイムの種類を紹介します。
配送リードタイムとは
配送リードタイムとは製品出荷の注文を受けてから納品までにかかる時間を指します。
配送リードタイムを短くするためには注文を受けてから手早く出荷するまでの手続きをすることが重要です。
また、出荷方法や納品先までの距離も影響します。
リードタイムは計測開始時点で異なる
配送リードタイムのほかにもリードタイムには複数の種類があります。
リードタイムの種類は計測開始時点および計測終了時点で異なるものです。
生産や物流に関わるリードタイムとして以下4点を紹介します。
- 出荷リードタイム
- 生産リードタイム
- 開発・製造リードタイム
- 調達リードタイム
種類 | 始点 | 終点 |
---|---|---|
配送リードタイム | 製品の注文を受けたとき | 製品を納品するとき |
出荷リードタイム | 出荷の注文を受けたとき | 製品を出荷するとき |
生産リードタイム | 生産の指示を受けたとき | 製品を出荷するとき |
開発・製造リードタイム | 製品を開発する企画をはじめたとき | 開発をはじめたとき |
調達リードタイム | 部品を発注したとき | 部品が届いたとき |
出荷リードタイム
出荷リードタイムは出荷の注文を受けたときから製品を出荷するまでの時間です。
出荷にかける手間が少ないほど短くなります。
生産リードタイム
生産リードタイムは生産の指示をうけたときから製品を出荷するまでの時間です。
生産リードタイムを短くするためには物流に関する時間だけではなく、生産効率も求められます。
開発・製造リードタイム
開発・製造リードタイムとは製品の開発までにかかる時間を表すリードタイムです。
材料を選定する時間や工場を決めることにもリードタイムが含まれます。
調達リードタイム
調達リードタイムとは製品の生産に必要な資材を調達するまでのリードタイムです。
配送リードタイムを短縮するメリット
リードタイムは短ければ短いほど良いとされています。
リードタイムが短いほどスピーディーな生産および受注管理が可能になるためです。
リードタイムを短縮するメリットとして、以下4点が挙げられます。
- 顧客満足度の上昇
- 在庫管理コストの削減
- キャッシュフローの改善
- 需給予測がしやすくなる
- 機会損失の減少
企業はリードタイムを短縮することを目指して生産能率の改善の取り組んでいるのです。
メリット1.顧客満足度の上昇
リードタイムを短縮することで顧客満足度の上昇を見込めます。
一般的に、製品を注文したユーザーにとって納品までの時間が長いほどストレスの原因となるものです。
配送リードタイムが短いということは、ユーザーを待たせる時間が短くなるということになります。
このように、リードタイムの短縮は顧客のストレスを減らすことに繋がるのです。
メリット2.在庫管理コストの削減
リードタイムを短くすることで在庫が少なくなり、在庫管理コストを削減できます。
保管スペースを圧縮、管理業務の簡略化といったメリットを受けられます。
在庫が多いと保管スペースの確保や人員コストの確保など在庫を管理するために必要な資源が必要です。
メリット3.キャッシュフローの改善
リードタイムが短くなるとキャッシュフローの改善を見込めます。
キャッシュフローとは経理において、お金の流れ(キャッシュフロー)を管理することです。
リードタイムを短くして在庫を少なくすることで在庫管理コストを削減できます。
コスト削減はキャッシュフローの改善にもつながるのです。
在庫を大量に抱えていると在庫コストの出費がかさんでキャッシュフローを圧迫してしまいます。
リードタイムを短くして在庫の回転を早めることでコストを削減し、利益向上に繋がるのです。
メリット4.需給予測がしやすくなる
リードタイムを短縮することで製品やサービスの需給予測がしやすくなります。
需給予測とは製品やサービスがどれだけ売れるか、需要を予測することです。
リードタイムを短縮することで生産量を調整できるため、需給予測ができない場合にも在庫や生産量を調整しやすくなります。
メリット5.機会損失の減少
リードタイムを短くすることで機会損失を減らせます。
機会損失とは本来得られるはずだった収益を取り逃してしまうことです。
顧客の需要は時間の経過とともに薄れていく可能性があるものです。
顧客が欲しい、と思うタイミングに物が売れる状態でなければ顧客は自社に対して興味をなくしてしまうかもしれません。
結果的に売れるはずだったタイミングに物を売れなくなることで機会損失に繋がってしまいます。
リードタイムを短縮することで、顧客が必要と思うタイミングで適切に製品を販売できるようになり、こういった機会損失を減らせるのです。
リードタイムを短縮するデメリット
リードタイムを短縮することは良いばかりではなく、思わぬデメリットに遭遇することもあります。
リードタイムを短縮するデメリットとして、以下のポイントに注意しましょう。
- 突発的なリスクに対応できない
- 作業効率にミスが発生しやすくなる
デメリット1.突発的なリスクに対応できない
リードタイムを短縮すると突発的なリスクに対応できなくなる場合があります。
突発的なリスクの例としては、災害や仕入れ先の倒産などによって部品の調達ができなくなるケースです。
リードタイムを短縮して在庫を減らすと在庫コストの削減はできますが、こういったリスクに対応することが難しくなります。
在庫を減らす場合は有事の際に代替案を用意しておくといいでしょう。
デメリット2.作業にミスが発生しやすくなる
リードタイムを短縮することで、作業にミスが発生しやすくなります。
業務効率化や生産時間の短縮はコストダウンをもたらしますが、現場の作業員にとっては負担が大きくなるものです。
作業員に負荷をかけすぎると、手抜き作業やミスを引き起こしてしまいます。
また、機械設備やIoT機器を導入することで人力作業を機械化することも考慮に入れましょう。
リードタイムの計算方法
リードタイムは通常日数でカウントするものです。
リードタイムの計算方法には「固定リードタイム計算」と「変動リードタイム計算」の2種類があります。
これらの計算方法ではリードタイムなどの情報を用いて予定開始日を逆算します。
リードタイムや予定開始日を判明させることで、生産や販売のスケジュールを立てられるようになるのです。
固定リードタイム計算
固定リードタイム計算とは、品目ごとに設定したリードタイムを固定のものと考えた計算方法です。
リードタイムと安全タイムを用いて予定開始日を求めます。
固定リードタイム計算では以下の計算式で予定開始日を定めます。
【固定リードタイムの計算】 予定開始日=納期-(リードタイム+安全リードタイム)
例えば、納期が3月15日でリードタイムが3日、安全リードタイム1日のケースを想定しましょう。
この場合、リードタイムと安全リードタイムの合計が4日になるので、予定開始日は納期の4日前である3月11日になります。
安全リードタイムとは
安全リードタイムとはリードタイムの誤差を考慮した時間のことです。
納期を確実に間に合わせるためには不測のトラブルを考慮しなければなりません。
例えば、リードタイムが3日であったとしても、交通トラブルや天候不良などの影響で配送が遅れてしまうことがあります。
そのような不測の場合に備えて、1日や2日など安全リードタイムを設定するのです。
変動リードタイム計算
変動リードタイム計算はロットの大きさに応じてリードタイムを計算する方法です。
1個あたりの実作業時間を考慮したうえで、以下の計算式で予定開始日を計算します。
【変動リードタイムの計算】 予定開始日=納期-〔(待ち+段取+後処理+移動)+オーダーの所要量×1個あたりの実作業時間〕
リードタイム以外に知っておきたい物流用語
製造や物流を考慮するうえではリードタイム以外にも抑えておきたい物流用語があります。
ここでは、生産に必要な「サイクルタイム」と「タクトタイム」について見ていきましょう。
サイクルタイムの計算方法
サイクルタイムとは「製品を1つ作るのにどれだけの時間がかかるのか」を表す時間です。
稼働時間を生産する個数で割ることで求められます。
タクトタイムの計算方法
タクトタイムとは生産工程における均等なタイミングを計るための作業時間です。
稼働時間を必要生産数で割った時間で求められます。
リードタイムを短縮する方法
生産工学という分野では生産工程において「4M」と呼ばれる投入材料が重要であるとされています。
4Mとは、品質管理において「人」「機械」「材料」「方法」の4つがうまく機能させる必要があるという考え方です。
この考え方は配送リードタイムにおいても同じことがいえます。
すなわち、「4M」に着目することで配送リードタイムを短縮できるのです。
<生産工程の「4M」>
・Man(人)
・Machine(機械)
・Material(材料)
・Method(方法)
- 人員の増加
- 設備のリニューアル
- IoT機器の導入
- DX化によるリードタイム短縮
方法1.人員の増加
人員を増加させることで配送リードタイムを短縮できます。
人数が多くなることで作業工数が増えるため、物流にかかる時間を削減できるのです。
人員の増加をするには人材コストの増加が求められます。
人員増加は4Mのうち「Man(人)」に注目した生産能率向上方法です。
方法2.設備のリニューアル
設備のリニューアルは4Mのうち「Machine(機械)」に着目した生産能率改善の方法です。
機械を新しくすることで作業能率が上昇し、リードタイムを短縮できます。
方法3.IoT機器の導入
IoT(Internet of Things)とは日常にある様々なモノがインターネットに接続される状態のことです。
「アイオーティー」と呼ばれ、「モノのインターネット」と訳されます。
IoT技術の発展によって機械化および自動化が進んでいます。
自動化を推し進めることで人の手を煩わす必要がなくなるため、IoT機器を導入して有効活用することで配送リードタイム短縮に繋がるのです。
IoT機器の導入は「Machine」および「Material(材料)」に着目した考え方です。
方法4.DX化によるリードタイム短縮
DXとはデジタルトランスフォーメーションの略語です。
DXとは仕事に限らず生活の場面でも多く使われる用語ですが、生産活動においてはデジタルの力で生産能率を上げる、という考え方をDXの活用と呼びます。
生産活動におけるDXの例としては、生産活動や物流活動の効率化といった活用方法が挙げられます。
これは、4Mのうち「Method(方法)」に着目しているものです。
配送リードタイムを短縮してコスト削減を目指そう!
リードタイムは主に物流の現場で使われる用語で、商品やサービスを発注してから納品されるまでの時間や日数を指すものです。
その中でも配送リードタイムは製品出荷の注文を受けてから納品までにかかる時間を指します。
リードタイムを短縮することで在庫コストの削減、顧客満足度の向上など様々なメリットがあります。
リードタイムを短縮させる方法では、4Mすなわち「人、機械、材料、方法」という4つの資源に着目して物流にかかる資源を強化することが効果的です。
物流から攻めの経営を考える際、リードタイムに注目して業務改善を狙ってみましょう。