WMSは物流を正確に動かす仕組みです。
「WMSを入れたからうちの倉庫は大丈夫」と過信してはいないでしょうか。
確かにWMSで便利になった作業は多いでしょう。
でも「なぜか利益が伸びない」「仕事が楽になった実感がない」という声があります。
物流はWMSだけじゃダメなのでしょうか。
AIを導入すると、何ができるようになるのでしょうか。
WMSとAIの違いや、解決できる悩みの違いについて詳しく説明をしていきます。
WMS導入しても変わらない倉庫
近年EC市場の拡大や人手不足問題などの背景があり、WMSを導入する倉庫が増えています。
しかしWMSを導入しただけでは問題解決には至らず、逆に倉庫管理業務の効率が下がってしまうケースさえあります。
WMSは、いわばデータを正確に管理するシステム。
このデータをいかに分析し、活用するかという視点が抜けているとWMSを導入しても課題が改善されない状態となってしまいます。
物流のWMSに足りないもの
WMSは物流倉庫の管理をしていくのに欠かせないツールです。
しかし「イマイチ満足度が上がらない」「残業が減らない」と解決しきれない問題があるのが事実です。
- 正確に出荷はできるけど遅い
- 正しく指示を出してくれるけど疲れる
- 部分最適はできてるけど全体がバラバラ
正確に出荷はできるけど遅い
WMSの導入により正しく出荷できるようにはなったけど、「もう少し仕事が早くなるといいな」というお悩みはありませんか。
確かにWMSは正しく出荷をする仕組みではありますが、荷物の量が2倍になったとしても2倍の指示を出すだけ。
作業スピードの設計をしてくれるわけではないので、人手不足や残業といった問題までは解決できないのです。
正しく指示を出してくれるけど疲れる
WMSは正しく指示を出すけど、仕事を楽にしてくれる仕組みではありません。
どの時間に混雑しているか、誰がどのルートでどれだけ歩いているか、という事柄までは認識しません。
同じ棚に人が集中する、通路が混雑する、という状況になれば、働くスタッフの不満が溜まっても仕方がありません。
効率化を求めると、WMSだけではカバーしきれないというのが現状かもしれません。

部分最適はできてるけど全体がバラバラ
WMSは正しく指示を出して正確な仕事をサポートしてくれますが、部分最適になってしまうと倉庫全体としては循環しにくくなってしまいます。
例えば、ピッキングは正確だけど動線の効率が悪い、というような状況になってはいないでしょうか。
ベテランと新人が同じ作業量で配置されてしまうという状況も、倉庫全体を見ると最適とはいえません。
なぜか利益率が上がらないという倉庫は、部分最適にとどまってしまっているのが原因かもしれません。
AIは未来予測エンジン
WMSとAIを同じようなものだと認識している方がいるかもしれませんが、似ているようで役割が違います。
WMSは在庫数や出荷数を記録し、管理するもの。
AIは、そのデータを分析し未来を予測するものです。
例えば、WMSを導入すれば「在庫がいくつあるか?」という問いに答えられますが、「来月もこのままで足りるのか?」という問いになるとAIの力が必要です。
WMSのデータを記録するだけでなく、そのデータを土台としてAIで活用してこそ、倉庫の循環を生み出せるようになっていきます。
WMS×AIで何が変わる?

ではWMSにAIを組み合わせると、何がどう変わっていくのかを具体的にイメージしてみましょう。
WMSで得たデータをAIが活用すると、以下のような変化が訪れます。
- 在庫管理は記録から予測へ
- ピッキングは作業から最短戦略へ
- 人員配置はデータ判断へ
- コストは結果から事前管理へ
在庫管理は記録から予測へ
AIは過去のパターンから、未来を予測するのが得意です。
WMSで在庫やロット・期限管理、在庫差異などが見える化されるようになりましたが、それはあくまでも現在の数字に過ぎません。
過去と現在はWMSで把握できるようになったので、AIで未来を予測していきましょう。
季節需要やキャンペーンによる需要予測をするのはもちろん、SKUごとの回転率や曜日別の出荷数など具体的な数値が見えるようになります。
「なんとなくこれくらいかな」というように勘を頼っていた部分が、正しくデータによって整理されるようになります。
倉庫スタッフの経験値は関係なく、誰が見てもわかる在庫管理ができるようになるでしょう。
ピッキングは作業から最短戦略へ
WMSを導入した倉庫では、ピッキングで取りに行く棚が明確になる、誤出荷が減るなどの効果がみられるでしょう。
これだけでも充分な効果だと感じるかもしれませんが、無駄な歩行や生産性のバラつきがまだ改善できるのではないでしょうか。
ここにAIが加わると、倉庫レイアウトや出荷オーダーの組み合わせを考慮して最短距離を提案してくれます。
「この順番で回れば歩行距離15%削減」というように数字で削減率を提示してくれるので、誰でも効率よくピッキングができるようになります。
人員配置はデータ判断へ
人員配置にWMSを活用しているという倉庫は少なくないでしょう。
作業件数や処理時間など、起きている事柄は正確に把握できるようになっているはずです。
では、「明日はどこに何人必要か?」というような予測という意味ではどうでしょう?
AIを導入すれば、ベテランや新人かというレベルに応じた作業難易度を考慮した上で、適切な位置への人員配置が可能になります。
個々の処理能力と負荷を把握できるようになるので、残業予測を立てられるようにもなります。
早めに残業への対応ができるようになり、結果的にスタッフの残業負担を減らしていけるようになります。
コストは結果から事前管理へ
「今月は想像以上にコストがかかってしまった」と結果を見て反省する日々が続いてはいないでしょうか。
WMSがあれば、在庫回転率やミス件数が数字で把握できるようになります。
さらにAIの力が加わると、予測して事前管理ができるようになるのです。
人件費や在庫コスト、返品コストなどを事前に予測すれば、利益を守る経営に変えていけるようになるかもしれません。
“コストは後から削るのが当たり前”となっている倉庫で、このサイクルが生まれると大きな変化が期待できるでしょう。
課題に合うAIシステムの選定

AIの効果を最大限に引き出すためには、課題に合うツールを導入しなければいけません。
AIシステムの選定のコツについて、考えてみましょう。
- 課題を見極めてシステムを選ぶ
- 既存システムとの連携
- 負担の少ないスモールスタートで
課題を見極めてシステムを選ぶ
まず倉庫内で解決したい問題はなんでしょうか。
倉庫が広くピッキングの効率化が課題なのか、季節やイベントでの需要予測が課題なのかによって必要なAIシステムが異なります。
またAIは必須ではありませんので、状況によってはWMSだけで充分という可能性もあります。
取り扱うSKUが少ない、出荷量が安定しているという倉庫では、WMSがあれば課題を解決できるかもしれません。
倉庫の具体的な課題と必要なシステムを見極め、本当に必要なものだけの導入を検討していきましょう。
既存システムとの連携
すでにWMSやERPなど複数の仕組みが動いている状態の倉庫であれば、これらの既存システムとの連携を考えていかなければいけません。
例えば需要予測や人員最適化を目的にAIを導入する倉庫で、バッチ更新が1日1回だとリアルタイム情報が共有できません。
じゃあAIが導入できないのかと聞かれるとそうではなく、仮にバッチ更新が1日1回なら需要予測を週や月単位で始めてみると負担が少ないです。
導入開始直後から難易度が高いAI活用をするのではなく、無理のない範囲から取り組むのがおすすめです。
負担の少ないスモールスタートで
AIを導入するからといって大革命を起こそうとすると、現場のスタッフに大混乱が生じます。
「せっかくだからできることは全部やりたい!」と思うかもしれませんが、全てを変えようとすると対応しきれなくなる可能性があります。
最初は、AIを導入しても提案を確認するだけで、現場に影響を出さないようにするという方法からでもいいでしょう。
成果が見えてから本格的に現場に反映させていくというくらいの気持ちでいるほうが、管理者も現場のスタッフも混乱しにくいです。
「AIに頼って大丈夫なの?」という疑いの念があると現場が動きにくいので、全員が納得した状態で活用していくといいでしょう。
3PL倉庫にAIが必要な理由

3PLは単純な外注先ではなく、複数荷主の物流を最適化させるものでなくてはいけません。
荷主ごとに条件が異なるのは当たり前で、そこへの対応が求められるのが3PLです。
- 複数荷主対応にはAI需要予測を
- 膨大なSKUを扱うならAIロケーション最適化
- 単価勝負ではなく利益率改善
- AIを武器にして差別化を
複数荷主対応にはAI需要予測を
荷主によって需要のピークが異なる場合があり、またピークが重なる場合もあります。
忙しさの波が重なっても対応しなければいけませんので、AIによる需要予測があると便利です。
人の勘だけで全ての荷主のピークを予測するのは難しく、予測が外れると対応が後手後手になってしまいます。
AIで事前に需要予測をしておけば、その需要に対応できる人員の確保や配置の工夫といった対応ができるようになり、大きなピークがきても対応できるようになるのです。
膨大なSKUを扱うならAIロケーション最適化
AIロケーション最適化とは、データに基づいて何をどこに置くのかを判断していくことです。
膨大なSKUを扱う3PL倉庫では、人の勘で棚割りを行っていると作業が追いつかなくなる可能性があります。
出荷頻度や同時購入傾向、サイズや重量などの情報から、適切な位置に配置して、最短動線で作業ができるようにしていくのがAIロケーション最適化です。
SKUが増えれば増えるほど効果が感じられますので、3PL倉庫では是非取り入れたいAIです。
単価勝負ではなく利益率改善
3PL倉庫は単価勝負になってしまっている倉庫が多いのが、現状です。
保管単価や出荷単価、ピッキング単価を他社と比較され、この世界線で戦っているのであれば改善が必要といえます。
そもそもなぜ単価勝負になってしまっているのかというと、単価以外で戦える要素がないからです。
倉庫の中は、あまり外部からは比較できません。
WMSが同じで、設備も似ているとなると単価で比較せざるを得ないのです。
AIで他倉庫との差別化ができるようになると、単価を削る必要がなくなり、利益が出せるサイクルが生み出されるようになります。
AIを武器にして差別化を
AIで他倉庫との差別化をしていく、という部分をもう少し詳しく考えてみましょう。
単価勝負が求められているわけではなく、3PL倉庫はデータ分析力や安定供給といった部分が求められる時代になってきています。
このような部分でAI活用ができれば、それが武器となります。
単価勝負型3PLだと委託業者という関係性にすぎないかもしれませんが、データを武器にしたパートナーとなることで荷主にとって欠かせない存在の倉庫となっていきます。
AIは使いこなせないと意味がない
AIを導入した3PL倉庫の中には、期待したほどの効果を感じられないという倉庫があります。
せっかくAIを導入したとしても、使いこなせなければ意味がありません。
AI導入時には”AI導入がゴールになっている”というケースが少なくありませんので、導入した後のことはあまり考えられていません。
AIは魔法ではありませんので、使いこなせる人がいなければいけません。
現場がAIを運用していけるのかを考えてから、AI導入を検討していくべきです。
現場の人材を育てるAI研修
AI導入と同じくらい大切なのが、使える人を育てる人材教育です。
AIは自動化装置ではありませんので、導入しただけでは宝の持ち腐れ。
使いこなせる人材がいないと、せっかくデータを集めても「よくわからない」「従来のやり方がいい」という結果になってしまうかもしれません。
現場の理解を得る、現場で活用していく、という点からも、AI研修は欠かせません。
スピード感をもって成果につなげるためにも、AI研修を大切にしながら倉庫の改善を進めていきましょう。

