D2Cは、Direct to Consumer(または Direct 2 Consumer)の略で、「ディーツーシー」と読みます。D2Cとは、メーカーやブランドが自ら企画・製造した商品を、従来のように問屋や小売業者を介さずに、自社のECサイトを使って直接(Direct)消費者(Consumer)に販売する仕組みです。
この記事では、D2Cの国内ブランドの成功事例6つを紹介して、成功事例から学ぶべきポイントを解説していきます。
それでは、見ていきましょう。
D2Cとは
まずは、D2Cとよく似た言葉であるB2Cとの違いを説明します。
D2Cの意味
D2Cは、その名の通り販売者がダイレクト(直接)にコンシュマー(消費者)と取引するビジネスモデルです。
アパレルや美容分野で主に採用されていましたが、近年はその他の分野でも取り入れられるようになっています。
<D2C特徴>
- 商品やサービスの製造・販売・郵送・広告まで、全て自社で行っている
- Webサイトを中心に商品やサービスを販売している
- 実店舗を持たないブランドもある
D2CとB2Cの違い
D2CとB2Cとの違いは、販売者と購入者の間に仲介業者がいるか否かです。
<B2Cのビジネスモデル>
B2Cのビジネスモデルは「担当制」で、商品が消費者に届くまでの工程の範囲が細分化されています。
- メーカーは企画、製造、マーケティングまでを担当
- 卸や小売は商品の仕入れを担当
- ECサイトや店舗が販売を担当
- 商品は消費者の手に
<D2Cのビジネスモデル>
- 企画、製造、マーケティング、自社サイト運営、消費者への配送まですべて自社
- 商品は消費者の手に
<大きなポイント>
- <B2C>
・それぞれの担当範囲で得た情報を担当外に広めるには工夫と労力が必要なため、消費者の要望がメーカーに伝わりづらい - <D2C>
・自社が大切にしている世界観を顧客へ届けたり、逆に、消費者が、商品のフィードバックを得ることが容易
・コミュニケーションが双方向になり、そのブランドを囲むファンコミュニティも活性化
D2Cが注目を集めている背景
D2C市場は年々成長を遂げ、2015年には1兆3,300億円だった市場規模も2025年には3兆円に達すると予測されています。
SNSやECサイトの普及
SNSやECサイトの普及率が上昇しています。
総務省の調査によると、SNSを利用している人の割合は全体の5割に達し、さらに普段利用しているインターネットサービスでは、インターネットショッピングが最も多く70%を超えています。
EC市場の拡大
メーカーやブランドのEC化率も増加傾向にあり、それに伴いEC市場も拡大しており、直近のBtoC-EC市場規模は約19兆円に及びます。
このようにオンラインを軸としたブランド展開や情報発信が容易になったことからD2Cが拡大しているのです。
参考:総務省「令和 3年版 情報通信白書のポイント」
経済産業省「電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました 」
消費者の価値観の変化
かつてのモノがあふれていた時代と異なり、現代は商品の機能よりもブランドの世界観やストーリーに価値を感じる消費者が増えています。
商品・サービスの機能や質だけでなく、それらが作られた経緯やブランドコンセプトへの「共感」が購入時の重要なポイントになります。
消費者はブランドの背景や作る人のストーリーに関心が高まり、独自の世界観を持つD2Cに対する共感が高まっています。
D2Cブランド成功事例7選
1.Mr. CHEESECAKE(食品)
企業名 | 株式会社Mr. CHEESECAKE |
販売商品 | チーズケーキ |
Mr. CHEESECAKEは、「世界一じゃなく、あなたの人生最高に。」をコンセプトにシンプルなチーズケーキを販売しています。
当初販売は、公式サイトで週2回のみでした。
代表の田村氏はフレンチのシェフで、「Instagramに投稿したチーズケーキ」を購入したいという顧客からの声がきっかけでオンラインでの販売をスタートしました。
SNSでは、チーズケーキの情報だけではなくシェフとしての経験を活かして料理のレシピなども発信して注目度を上げています。
また、ブランディングとして独特の世界観を重視し、大量販売を行わないことで成功しました。
現在はECサイトだけでなく、全国各地でのポップアップストアでも商品の販売を行っています。
2.BASE FOOD(食品)
企業名 | ベースフード株式会社 |
販売商品 | 完全栄養食 |
ベースフード株式会社は、1食のみで必要な栄養素を摂取できる完全栄養食を販売しています。
「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」を理念に、完全栄養のパン・麺などを、主に自社のECサイトで販売しています。
完全栄養食のパンやパスタを販売している企業としての先駆けですので、商品の特性を伝えるために、主に消費者とのコミュニケーションを重視しました。
<Twitterのポイント>
- 購入を検討している人:購入した人の理由から商品価値を伝える
- 購入の継続を促したい人:他のユーザーの継続理由や、継続するための工夫を伝える
そしてベースフードでは努力ポイントとして以下のように述べています。
消費者ごとのアプローチを実施。引き続き商品展開に力を入れていくと共に、今後は海外展開も推進していく予定です。
3. 17kg(アパレル)
企業名 | 株式会社イチナナキログラム |
販売商品 | アパレル製品 |
17kgは、韓流ファッションの販売で10代の女子から絶大な人気を誇るD2Cブランドです。
Instagramのフォロワー数は45.5万人のD2Cブランドですが、創業者は実は男性です。
もともとはWebサービスを運営していた経験もあり、マーケティングはかなり得意であったことが理由として挙げられます。
4.土屋鞄製造所(アパレル)
企業名 | 株式会社土屋鞄製造所 |
販売商品 | 皮革製品 |
土屋鞄製造所は、大人向け革製品などを企画・製造・販売している老舗ブランドです。
1965年にランドセル職人だった土屋國男さんが創業し、約半世紀以上もの間、様々な人に愛されてきました。
2000年代後半以降は、大人向けの鞄や財布などのブランドもECサイトを展開しています。
エンジニアやマーケターなども採用することで、これまでより大幅に顧客層を広げ、伝統ある仕事鞄ブランドとして地位を確立しました。
5.FABIUS(美容)
企業名 | ファビウス株式会社 |
販売商品 | 美容製品や健康食品等 |
ファビウス株式会社は、美容製品や健康食品の製造販売を行う会社です。
代表商品である「すっきりフルーツ青汁」が2017年に累計30,000万個の大ヒット商品となり、年商131億円を達成しました。
<特徴>
- 商品は全てECサイトで販売
- 「毎月定期便」によって業績を拡張
- 積極的にメルマガやLINEで商品の情報を発信
などを特徴として、新商品のPRや顧客を惹きつける取り組みを行なっています。
6.BULK HOMME(化粧品)
企業名 | 株式会社バルクオム |
販売商品 | 化粧品 |
BULK HOMMEは、主に男性向けの化粧品を販売している化粧品ブランドです。
「世界のメンズビューティーをアップデートする」との理念のもと事業を拡大し、日本ばかりではなく海外進出にも力を入れています。
2013年から販売を開始し、ECサイトからの定期購入を戦略としたことから、D2Cブランドの先駆者と呼ばれています。
SNSの中でもInstagram上でのコミュニケーションに力を入れているほか、SNSを活用した広告も導入し、新規顧客をボーダレスに獲得しています。
オンラインでの直接販売から徐々に販路を拡大し、2020年の秋には大手ドラッグストア1,000店舗以上での取り扱いも始まりました。
成功しているD2Cブランドの共通点とは
前述した成功しているD2Cブランドに共通しているポイントは、なんなのでしょうか。
ここでは、D2Cブランドの成功要因を主に3つ挙げています。
ターゲット顧客を理解できている
もっとも重要なのは、ブランドが顧客は誰なのかについて、明快な回答を持っているという点です。
いわゆる市場のセグメンテーション、ターゲティングが効果的に機能し、かつそのターゲット顧客を把握することにより、顧客に支持されるブランドになっています。
顧客を定義し、顧客を分析することで、「ブランドのメッセージ」「ECサイトの世界観」「訴えかけるコピー」等すべてが唯一のものとなります。
顧客を理解し、その顧客にあったコミュニケーションを行うことが、「推奨されるブランド」「ブランドのファン獲得」につながるでしょう。
独自の世界観を確立できている
売れるブランドをつくる上では、D2Cで独自の世界観を確立できているという点が非常に重要です。
他社にはないオンリーワンの世界観の確立ができてこそ、そのD2Cブランドはえらばれる理由となります。そのため自社のブランディングが非常に重要です。
ブランドの独自の世界観を確立することがユーザーを惹きつける重要なポイントであることを意識しましょう。
SNSでファンを獲得している
成功しているD2CブランドはSNSを上手に活用しています。
ファンとなったブランドを知ったきっかけとしては、テレビCMに次いでSNSが効果があるとする、マーケティング調査結果もあるようです。
まとめ
この記事では、D2Cで成功しているブランドを紹介し、共通するポイントを簡単に紹介しました。
<D2Cブランドを成功させるポイント>
- D2Cブランドの世界観・ストーリーが重要
- 商品・サービスに関するマーケティング重要
- ブランドの世界観を落とし込むECサイトの構築
- その後のSNSを活用した集客部分までの構築