物流業務で非常に重要な3PL(サードパーティー・ロジスティクス)をあなたは知っていますか?
この記事では「3PL」について解説していきます。結論、3PLは国も推進している物流業務で必須の手法です。
3PLの導入を検討する際、知っておきたい「基礎知識」を調査した結果をまとめたので、ぜひ見ていただければと思います。
その他にも「3PLの定義」や「メリット・デメリット」「導入の注意点」についても説明していきますので、この記事を読んで3PL導入の参考にしていただければ幸いです。
また「3PLの企業一覧」を知りたい方は、こちらで解説を行っていますのでぜひ確認してみてくださいね。
3PLとは
3PLとは「サードパーティー・ロジスティクス(Third Party Logistics)」の略で、荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託・遂行することを指します。
荷主と運送業者は本来「利益相反」する関係にありますが、それらの不都合を解決するためにノウハウを持った第三者を挟むことで効率的に運用していく考えのことです。
- 3PLの形
- 3PLの歴史
導入の際には以上の2点をまず基礎知識として知っておくことをオススメします。
それぞれ詳しく見てみましょう。
3PLの形
3PLは第三者が荷主企業に代わって最も効率的な物流戦略や物流システムの創出を提案し、荷主企業のロジスティクス全体を包括的に請け負う業態のことです。
3PL以外にも多数あり、以下のように分類されています。
- ファーストパーティー:荷主企業が直接ロジスティクスを行う
- セカンドパーティー:運送会社や倉庫会社などにロジスティクスを部分的に委託する
- サードパーティー:市場の変化に合わせて荷主へ継続的な改善や提案を行う
これに合わせて4PLという考え方もありますが、まだ始まったばかりの考え方でそこまで浸透はしていません。
3PLは国土交通省も推進している事業形態です。
3PLの歴史
3PLは近年になって登場した手法ではなく、その歴史は1990年代のヨーロッパに始まります。
当時から広がりを見せ始めていた3PLは、90年代後半になってから日本でも注目を集め始めました。
90年代といえばパソコンが普及しインターネットが広まり始めた時代。以降、Amazonや楽天などの普及により、急速な市場の変化に対応するための手法として今日に至るわけです。
3PLの定義
3PLには大きくわけて2種類の定義があります。導入する前にまずどのようなタイプなのかを知っておきましょう。
- アセット型
- ノンアセット型
それぞれ詳しく解説します。
アセット型
アセット型は、3PL業者が人も施設も全て自前で所有している場合を指します。
倉庫・輸送手段・物理拠点なども持っているため、ドライバーの安全教育や物流拠点の業務改善を行って直的的にサービスの向上が可能です。
荷主業者と3PL業者が意思疎通を行いやすい環境となっており、両者の認識をすり合わせやすい特徴を持っています。
ノンアセット型
ノンアセット型は、3PL業者の提供するサービスが全て外注となります。そのため場合によっては輸送や倉庫をそれぞれ違う企業にやってもらう形です。
アセット型と比べるとより流動的な対応が可能となるため、荷主企業の要望に応じた多彩なサービスの提供が可能となっています。
目先の利益に囚われずに柔軟な対応ができるのが強みです。
3PL導入のメリット3選
3PLを導入することで得られるメリットは、以下の5つがあります。
- コア事業に専念できる
- 物流コストを最適化できる
- 物流品質・顧客サービスを向上できる
- 労務リスクを排除できる
- 販路を拡大できる
それぞれ詳しく解説します。
コア事業に専念できる
コア事業に専念できるのは、3PL導入で得られるメリットの中でも大きなものの1つです。
荷主企業にとって物流戦略は良い部分はあるものの、大きな負担となるのも事実でしょう。そんな中で物流を3PL業者に任せることで、荷主企業は物流以外の部分に専念できます。
例えば、商品の研究開発など新たな分野への投資も可能です。
コア事業に専念し企業への成長へと繋げられるという面において、3PL導入は大きなメリットと考えて良いでしょう。
物流コストを最適化できる
3PLを導入することで物流コストを最適化することが可能です。
荷主企業が自前で物流をしようと思うと、配送費や人件費といった様々なコストがかかるうえに、それらを適切に管理・投資しなければなりません。
物流だけでなく運営面でのコストも大きくかかってくるため、荷主企業にとっては大きな負担です。
しかし外部の3PL業者に委託することで費用を軽減したうえで物流コストの最適化が可能となります。
物流品質・顧客サービスを向上できる
物流品質・顧客サービスを向上できるのも3PLを導入するメリットの1つでしょう。
なぜなら、3PLを担っているのは物流のプロだからです。
納品における品質や顧客サービスの面で信頼でき、かつ柔軟な対応も可能となります。
競合他社に対するビジネスの優位性を向上できるのはもちろん、日々変わる顧客ニーズにも柔軟に対応が可能です。
以上のように3PLを導入することで、物流品質・顧客サービスの向上ができます。
労務リスクを排除できる
3PLを導入することで、労務リスクを排除できます。
企業にとって最も重要なのは人材です。しかしながら人材は大きくコストがかかるうえ、人間関係を元に離職される可能性も大いにあります。
3PL業者へ業務を委託することで、物流に関しての労務リスクを排除することが可能です。
販路を拡大できる
3PL業者に物流を委託することで、自社では対応できなかった新しい販路を開拓できます。海外を視野に入れた越境ECはその最たるものでしょう。越境ECをするためには海外への物流が可能な業者を選択することから始まるため、大きな労力がかかってしまいます。
またECモールなど出店するタイプのECサイトを利用している場合、それぞれで配送方法が異なることから参入を躊躇ってしまうケースも考えられます。
3PL業者はそういった異なる配送方法にもノウハウがあるため即座に対応が可能です。
結果的に販路を拡大できるでしょう。
3PLのデメリット2選
3PLはメリットが大きい一方で、デメリットももちろん存在します。特に以下の3つについては要注意です。
- 契約関連が煩雑になりやすい
- 自社にノウハウが蓄積しない
それぞれ詳しく解説します。
契約関連が煩雑になりやすい
3PLでは業者に委託する場合、契約関連が煩雑になりやすいデメリットがあります。
契約時に細かい部分まで詰めた契約を交わさなければいけないためです。
ざっくりとした契約では、コスト面で不透明さを感じる場面が多く出てきたり、場合によっては大きなトラブルの原因となる可能性すらあります。
手間ではありますが、外部の業者に委託する以上、細かい部分まで詰めることが重要です。
後に禍根を残さないためにも、契約書は詳細に設定するようにしましょう。
自社にノウハウが蓄積しない
3PLを導入するデメリットとして、自社にノウハウが蓄積しないという点が挙げられます。これは3PL業者に業務をアウトソーシングしているためです。
そのため例えば物流関係の問題が発生した場合、問題点や改善点が不明瞭のままとなりやすいデメリットがあります。
意識して物流関係を熟知している人材を育成するなど、対策が必要でしょう。
自社にノウハウが蓄積しない点は3PLを導入するうえで非常に大きなデメリットです。
3PL導入で注意したいこと3選
3PLのメリットとデメリットがわかったところで、次に導入時に注意したいポイントを解説します。業種によって様々なものがありますが、以下の3点は共通している項目です。
- 委託業務の範囲を明確にわける
- 3PL業者との情報共有を密に行う
- 繁忙期や閑散期の対応を考える
それぞれ詳しく解説します。
委託業務の範囲を明確にわける
委託業務の範囲を明確にわけましょう。どこまで業務を委託するかでコストが大きく変わってくるからです。
委託できる業務範囲は3PL業者によって異なりますが、大きくわけると以下の5つが該当します。
- 入庫から倉庫での保管
- 仕分け
- ピッキング
- 梱包
- 出荷
まず自社の改善点を洗い出すことから始めると、委託する業務を検討しやすくなります。自社のどこに問題があるのかを事前に見える化しておきましょう。
3PL業者との情報共有を密に行う
3PL業者との情報共有を密に行うことにも注意しましょう。3PLを導入したからといってすぐに結果が出るわけではないからです。中長期的な視点でこまめに情報共有を行って連携を取っていくことで、はじめて利益へと繋がります。
他にもこまめな情報共有によって、何かトラブルが起こった際にも迅速な対応が可能です。3PLを導入してすぐは、まずお互いが信頼関係を持って働けることを第一に考えるようにしましょう。
そのためにも情報共有を密に行うことは非常に重要です。
繁忙期や閑散期の対応を考える
繁忙期や閑散期の対応を考えておくことも注意したいポイントとなってきます。企業によって様々ですが、連携をしている3PL業者が自社の繁忙期に適切な対応を取れるかは非常に重要となるためです。
特に発送の遅延や配送ミスは、企業の信頼の低下に直結します。そのため繁忙期には必要な人数の人材を配置しましょう。
同様に閑散期では過剰な人員を整理することも重要なポイントです。
繁忙期・閑散期の対応をしっかり取ってくれるかどうかは、3PL導入で注意するようにしましょう。
3PLの選び方
3PLを導入する際、どのような点を意識して選べば良いのでしょうか。自社に合ったものを選ぶのが一番ですが、以下のポイントを抑えておくことでより選びやすくなります。
- ノウハウが豊富か
- ITシステムが整備されているか
- サービスとコストのバランスは適切か
ノウハウが豊富か
ノウハウが豊富かどうかは、3PL業者を選ぶうえで非常に重要なポイントとなってきます。なぜなら、自社の業種に理解がないと代行がスムーズに進まないからです。
基本的な部分として、3PLはノウハウが豊富なプロが物流業務を処理します。しかしそのノウハウにも様々なものがあるため、これまで自社の業種に関係ない業種ばかりを担当してきた3PL業者であれば、スムーズな代行まではどうしても時間がかかってしまいます。
一方で代行の経験がありノウハウが蓄積されていれば、スムーズな代行が可能です。
以上のことから、3PLを選ぶ際は自社の事業に理解がありノウハウが豊富かどうかを意識しましょう。
ITシステムが整備されているか
ITシステムが整備されているかどうかは、3PL選びで重要なポイントの1つとなってきます。なぜなら、ITシステムが整備されていると単純に処理効率が上がるためです。
ITシステムの整備によって顧客へ商品が届くまでのリードタイムの短縮やコストの削減にも繋がるなど様々な効果を得られます。
一概には言えませんが、ITシステムはなるべく最新であればあるほど良いというのが通例です。
3PLを選ぶ際はITシステムが整備されているかどうかを必ず確認しましょう。
サービスとコストのバランスは適切か
サービスとコストのバランスが適切かどうかもポイントとなってきます。3PL業者は多様なサービスを取り扱っているためです。
おおよそほとんどの3PL業者は物流以外にも対応しています。サービスの中には自社に合わせてカスタマイズが可能なものもあるでしょう。
代行サービスをカスタマイズしたり追加したりするのは非常に便利ですが、一方でコストもその分発生します。
提供してくれるサービスとコストのバランスが適切かどうかは、3PLを選ぶ際に必ず意識しておきましょう。
3PLと4PLの違いとは
3PLと合わせて近年広まりつつあるのが、4PL(フォースパーティー・ロジスティクス)です。
4PLとは従来の3PLにコンサルティング機能が加わったものを指します。4PL業者を3PL業者と荷主業者の間に入れることで、第三者的な視点を持ちながらプロでユースしてくれる仕組みです。
日本での導入も試みられ始めていますが、今後広がるかどうかはまだ未知数の考え方でもあります。
3PLとはメリットの大きい物流委託方法
3PLは自社で扱っていた物流業務全般をプロの業者へ委託し、品質・サービスの向上をはかる手法です。
そこには単なる物流業務の丸投げではなく、自社の業務負担軽減やコア業務への専念といったメリットが多数存在しています。
一方で物流業務を委託するので契約関連が煩雑になりやすく、自社に物流のノウハウが蓄積しないというデメリットがあります。これらのデメリットは委託業務の範囲を明確にわけたり、3PL業者との密接な情報共有などである程度防ぐことが可能です。
3PLは国も推進している導入必須と言っても良い手法となりつつあります。3PLの導入を検討している方は、まずどのような業務を委託するべきなのかをしっかり検討してきましょう。