在庫管理においては引当の仕組みや引当による在庫数の計算方法を把握することが重要です。
この記事では在庫管理における引当の意味やメリットについて事例と共に紹介します。
在庫引当をすることによって「有効在庫数」をチェックすることで在庫を過不足なく管理できます。
引当の方法や活用ツールを紹介するので、引当をする際に参考としてください。
<この記事で分かること> ・在庫引当とは? ・在庫引当の計算例を確認したい ・在庫引当を管理するにはどんな方法がある?
引当とはなぜ必要?
在庫管理をする際に重要なのが「引当」という考え方です。
引当は在庫管理だけでなく、会計用語としても使われている概念です。
在庫引当において、引当はどのように使われているでしょうか?
事例と共に引当の使い方を確認していきましょう。
在庫引当のロジック
在庫引当とは受注したタイミングで十分な在庫を準備できるように在庫を管理することです。
せっかく顧客から注文から入っても、在庫がなければ商品を発送できません。
在庫引当では注文が入って出荷予定の在庫を区別するために必要な在庫管理方法です。
「引当」の意味
「引当」の読み方は訓読みでそのまま「ひきあて」と読みます。
そもそも、「引当」とはどういう意味を持つでしょうか?
辞書によると、引当は以下の通り定義されています。
【引当とは】
引用:『引当』とは – 実用日本語表現辞典|Weblio
抵当や担保のこと、または、将来の何かに備えてお金を準備すること。
在庫引当では、将来の受注に備えて在庫数を確保することを「在庫引当」といいます。
引当は在庫管理以外にも会計用語として使われることが多いです。
未引当はどういう状態?
「未引当在庫」とは倉庫にある実在庫のうち、まだ出庫の対象となっていない在庫です。
これに対して、注文が入った等の理由で出庫の予定が入った在庫を「引当済み在庫」と呼びます。
未引当在庫は以下の式で計算されます。
【未引当在庫の計算】 未引当在庫=実在庫 - 引当済み在庫
引当の類義語
引当は「義務が果たされるという保証」という意味を持ちます。
引当の類義語として、以下の言葉があります。あわせて確認しておきましょう。
【引当の類義語】
セキュリティー・證券・安泰・引当・裏付け・警備・裏付・引当て・安全保障・保障・安全・保証・セキュリティ
在庫管理における引当と「有効在庫数」
ここからは、在庫管理における引当の計算例を見ていきましょう。
以下は、とある倉庫の在庫数と入庫・出庫を管理したものです。
3月12日時点では在庫数が50個あるため、50個分の受注をすると在庫数が足りなくなってしまいます。
日付 | 取引 | 在庫数 | 入庫 | 出庫 |
---|---|---|---|---|
3月1日 | 前月より繰越 | 50個 | 50個 | |
3月8日 | 30個受注(未出荷) | 50個 | ||
3月12日 | 50個受注 | 50個 | ||
3月13日 | 3月8日受注分を出荷 | 20個 | 30個 | |
3月15日 | 3月12日受注分を出荷 | -30個 | 50個 |
有効在庫数
在庫引当を考慮するときに大事なのが「有効在庫数」という考え方です。
有効在庫数とは、実際の在庫数と将来出庫される見込みの在庫を調整したものです。
例えば、実在庫が50個ある時点で商品30個分の受注があった時点では出荷されていないので実在庫は減少しませんが、将来的に出荷される見込みです。この段階では30個分を引当と設定して「実在庫50個」「有効在庫20」となります。
有効在庫を超える注文があった場合、実在庫があるからといって注文を受けてしまうと在庫が足りなくなってしまいます。このようなトラブルを避けるため、在庫引当を設定して有効在庫数を管理する必要があるのです。
日付 | 取引 | 実在庫数 | 引当数 | 有効在庫数 |
---|---|---|---|---|
3月1日 | 前月より繰越 | 50個 | ||
3月8日 | 30個受注 | 50個 | 30個 | 20個 |
3月9日 | 3月9日受注分を30個出荷 | 20個 | 0個 | 20個 |
3月10日 | 50個仕入・入荷 | 70個 | 0個 | 70個 |
3月11日 | 20個受注 | 70個 | 20個 | 50個 |
3月12日 | 60個受注 | 70個 | 80個 (=20+60) | -10個 |
なお、有効在庫数は以下の計算式で表されます。
例えば、実在庫数が60個のときに引当数が20個設定していると、有効在庫数は40個です。
有効在庫数 = 実在庫数 - 引当数
会計における引当
会計における引当の代表例として「貸倒引当金」があります。
貸倒引当金とは、掛け取引をした取引先が倒産、すなわち貸倒に関するリスクに備えるための引当金です。
通常、貸倒引当金を設定する場合は売上債権の何パーセントかを貸倒金引当金として設定します。
例えば、貸倒引当金を5%に設定している場合、100万円の掛け取引をした場合は5万円を貸倒引当金として準備することになります。
在庫引当をする意味とメリット
在庫引当をする目的は適切な在庫管理をすることです。
在庫管理で理想的な状態は注文した分だけ在庫が十分に存在し、適切に販売できる状態です。
しかし、顧客からの需要や在庫の状況は不安定であるため、理想的な状態になることは滅多にありません。
そこで、在庫引当によって在庫管理をすることで理想的な状態に少しでも近づけるようにするのです。
- 適切なタイミングで仕入ができる
- 顧客トラブルを避けられる
- 在庫管理の効率化
メリット1.適切なタイミングで仕入ができる
在庫引当をすることで適切なタイミングで仕入ができるようになります。
在庫管理をする際、在庫が多すぎても在庫管理コストがかさみますし、在庫が少ないと必要な時に在庫が足りなくなってしまいます。
在庫は適切なタイミングで適切な量を準備することが重要になるのです。
在庫引当を計算しておくことで、在庫量を調整できるようになるので適切なタイミングで仕入が可能です。
メリット2.顧客トラブルを避けられる
顧客から注文が入ったにも関わらず、在庫がない状態だと受注した商品を発送できなくなります。
手元にない商品は改めて発注して取り寄せる必要がありますが、発注の間にタイムラグが生じてしまいます。
発送までの時間が長くなってしまうと顧客トラブルの原因となってしまうことがあるでしょう。
在庫引当をしておくことで、こういったタイムラグを防げるため、顧客トラブルを避けられます。
入庫ミスや在庫の数え間違えといった事象にも対応可能です。
メリット3.在庫管理の効率化
在庫引当を計算して有効在庫数をチェックすることで、在庫管理が効率化できます。
実在庫数が豊富にあったとしても、有効在庫数が足りない状態だと十分な在庫数とはいえません。
有効在庫数を計算しておくと、早めに在庫を確保できるため突然の受注にも対応できるようになります。
在庫引当の方法
在庫引当を管理する方法として、以下3つのツールが挙げられます。
- 手書きで管理する
- エクセルで管理する
- 在庫管理システムを利用する
アナログで引当を計算するほか、在庫管理システムを使用して有効在庫数を管理するという方法がおすすめです。
方法1.手書きで管理する
在庫引当を管理するためには手書きで管理するという方法があります。
冒頭で紹介した事例のように、「受注」「仕入」「入庫」「出庫」「引当」を手書きで管理します。
手書きで管理すれば、特別なシステムは必要ないため手軽に引当数の管理が可能です。
ただし、小規模な取引であれば手書きで済むかもしれませんが大規模な取引だと件数が多くなり、手書きでは追いきれなくなってしまいます。
方法2.エクセルで管理する
エクセルやスプレッドシートなどの表計算ソフトを使えば手書きを使うよりも効率的に在庫管理ができます。
マクロやVBA等のツールを使えばシステム的に在庫を把握しやすくなるでしょう。
しかし、表計算ソフトを使っても機能に限度があります。
また、現場の人間がすべて正しく表計算ソフトを扱えるとは限らず、ヒューマンエラーも発生し得るものです。
方法3.在庫管理システムを利用する
在庫引当によって有効在庫数を管理するなら在庫管理システムがおすすめです。
在庫管理システムでは資材や商品の在庫数を把握するほか、引当数を計算して在庫の過不足を効率的に管理できます。
数字を入力するだけで、簡単な操作で済みますので人的な工数もかからないという点もメリットです。
次の項からは在庫引当を設定するうえでおすすめの在庫管理システムを紹介します。
在庫引当におすすめの在庫管理システム
手書きやエクセルではコストをかけずに在庫管理が可能ですが、管理に手間が生じてしまいます。
一方、在庫管理システムでは簡単な運用で効率的な在庫管理が可能です。
ここからは、引当による在庫管理ができるツールについて紹介します。
ロジザードZERO
「ロジザードZERO」はクラウド倉庫管理・物流在庫管理システムができる在庫管理システムです。
BtoC・BtoB物流の入荷・保管・出荷・棚卸といった業務フローをしっかりとカバー!
物流ロボットを導入しており、簡単な操作で操作できます。
在庫管理だけでなく、物流業務を総合的に効率化するツールとして好評です。
EC分野を得意としており、さまざまな商材に対応しています。
365日稼働でサポート体制を整えているため、年末年始もしっかりサポートしてくれます。
企業名 | ロジザード株式会社 Logizard Co., Ltd. |
業種 | 情報通信業 |
事業内容 | SaaS(クラウドサービス)事業 情報システムの開発及び販売 物流業務・小売業務コンサルティング |
創立年月日 | 2001年7月16日 |
本社所在地 | 〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町三丁目3番6号 人形町ファーストビル4階 |
サービスURL | https://www.logizard-zero.com/services/ |
COOOLa
「COOOLa(クーラ)」はクラウド型の倉庫管理システムです。
出荷予測機能を搭載しており、在庫切れによる販売機会損失を防いでくれます。
過去の入出庫等による実績から在庫の消費予測をして、在庫切れを感知するとアラートで知らせてくれる機能です。
【Coolaの出荷予測機能】 資材の発注アラート:梱包箱や送り状台紙などの入出庫実績、入荷予定、納入リードタイムから、在庫切れ時期を予測。発注が必要なタイミングで通知を行います。 同梱物の在庫切れ予測:チラシやノベルティ等の同梱物の在庫、入出庫実績から在庫の消費予測(週単位)を表示 (参考:Coolaサービスページより)
企業名 | 株式会社ブライセン BRYCEN Co.,Ltd |
従業員数 | 227名(内女性59名) |
資本金 | 263,007,500円 |
設立 | 1986年(昭和61年)4月 |
本社所在地 | 東京都中央区明石町8-1 聖路加タワー30F |
事業内容 | 物流倉庫モニタリング・監視システムの開発、販売 など |
サービスURL | https://cooola.jp/ |
TEMPOSTAR
「TEMPOSTAR」は複数のEC・ネットショップ運営を効率化できるツールです。
TEMPOSTARには複数倉庫の管理ができるマルチロケーション機能が搭載されています。
マルチロケーション機能では複数倉庫に分散している在庫における受注引当と出荷、配送指示・処理を実施し、在庫管理を効率化してくれます。
会社名 | SAVAWAY株式会社 |
本社 | 〒164-0012 東京都中野区本町1-32-2 ハーモニータワー17F |
設立 | 2017年5月 |
資本金 | 5,000万円 |
事業内容 | EC支援サービス事業 ・複数ネットショップ一元管理サービス「TEMPOSTAR」 ・ECコンサルティングサービス |
サービスURL | https://commerce-star.com/ |
在庫引当を活用しながら在庫管理をしよう!
在庫数を把握し、適切なタイミングで在庫数を調整することで、在庫コストを削減できるだけでなく顧客トラブルを避けられるというメリットがあります。
在庫引当を計算することによって有効在庫数を把握します。
有効在庫数とは、実際の在庫数と将来出庫される見込みの在庫を調整するための在庫数です。
在庫引当をする方法としては手書きやエクセルによる計算のほかに、在庫管理システムがおすすめです。
在庫管理システムでは簡単操作で使いやすいだけでなく、在庫数を適切に管理できるため効率的な倉庫の運営ができます。
在庫引当を正しく管理して効率的な在庫管理を実現しましょう!