コンテナから輸入貨物を取り出す荷下ろし作業「デバンニング」は、きつい仕事としても知られていますが、いくつかのコツを掴めばスムーズに作業ができるようになります。
この記事では、デバンニングの方法や料金などの基本情報、きついと言われている理由とコツ、コンテナの単位と積み上げ・積み下ろし方法などについて解説します。
国際貿易業界でよく使われている「デバンニング」についての理解を深めたい方は、ぜひご覧ください。
デバンニングとは?
デバンニング(Devannning)とは、コンテナの中にある貨物を取り出す作業のことを意味していて、輸出貨物をコンテナに積み込む作業をバンニング(Vanninng)と呼びます。
物流業界や貿易業界では、「デバン」と略していることも多く、海運貨物取扱業者や倉庫業者とのやりとりがある方は、頻繁に耳にする機会が増えるでしょう。
コンテナのサイズが大きいため、複数人で作業したり、フォークリストを使ったりして作業することが多いです。
コンテナバンニングの方法とは?
コンテナバンニングがどのタイミングで行われるのか、以下で輸送の全体の流れから見ていきましょう。
- 船会社にコンテナの予約
- 空のコンテナの取り場所とバンニング後の実入りコンテナの搬入先を確認
- コンテナを運送するドレー業者を手配(※ドレー業者=海上コンテナを牽引する特殊な大型トレーラー)
- ドレー会社が運送した空のコンテナの汚れや破損がないかを確認
- 輸出貨物をバンニング
- ドレー会社がバンニングした実入りコンテナをコンテナターミナルに搬送
- コンテナヤードから予約した本線にコンテナの積み込み
- 輸出
- 本船到着日が近づくと、輸入者の元に連絡が来る
- 輸出通関の手続き
- デバンニング
- ドレー会社がデバンニングした後に空になったコンテナをターミナルに返却
5段階に組み込まれているバンニングは、荷物を積み込むだけの簡単な作業に見えますが、実際は以下のような面で過酷と言われています。
- 真夏のデバンニングはコンテナ内部の温度が50度を超えることがある
- 真冬はコンテナ内部がマイナスになることがある
- コンテナ内にスペースがあると輸送中に荷物の破損が起きて、損害賠償の請求が来る可能性がある
- ただ荷物を積み込むのではなく、スペースを作らないためにパズルのように計算が必要である
- 積み込むように言われた荷物が余ることなくコンテナに収納する必要がある
段ボールに梱包された商品や材料を開封するのとは違って、コンテナのデバンニングは労力とリスクが大きいことが分かります。
コンテナバンニングの料金とは?
コンテナバンニングを外注するのであれば、荷物の梱包形態、重量、荷物の内容の条件によって多少変動するものの、おおよそ以下の料金が相場と言われています。
- 20FTコンテナ:15,000〜25,000円
- 40FTコンテナ:20,000〜50,000円
上記の料金に含まれている項目は以下のとおりです。
- システム利用料
- 業務管理料
- 倉庫保管料
- デバンニング料
- 入庫料
- 検品料
- 出荷・ピッキング料
- 梱包・流通加工料
- 配送料
各社によって料金形態は異なるため、いくつかの企業に見積もりを出してもらってから比較して検討すると、節約できます。
デバンニングがきついと言われる理由とは?
デバンニングがきついと言われている理由は、以下のとおりです。
- 素早く作業することが求められる
- 扱う荷物の荷重が重い
- 屋外での作業になる
それぞれの理由について解説します。
素早く作業することが求められる
デバンニングがきついと言われている理由に、作業が単純であるゆえにスピーディーに仕事をすることが求められている点が挙げられます。
作業内容としては、「コンテナから荷物を取り出す」というものですが、コンテナに入っている大きくて重い荷物を素早くかつ破損しないように運ぶ作業は根気が必要です。
熟練者であればあるほど、スピーディーに仕事をするため、デバンニングの仕事を始めたばかりの方は、素早い作業に慣れるまできつく感じる可能性があります。
扱う荷物の荷重が重い
デバンニングがきついと言われている理由に、コンテナの中に入っている荷物が大きくて荷重が重くて運ぶのがむずかしい点が挙げられます。
コンテナの中にはできるだけ隙間なく荷物を詰めた方がコスパが良くなるため、段ボールなどを使ってとにかく大量の荷物が運ばれていくのが一般的です。
ひとりで持つには重すぎる荷物があることもありますが、ベテラン作業員がひとりで持てる重さであれば誰かに助けを求めることができないため、力の弱い方は苦労するでしょう。
屋外での作業になる
デバンニングがきついと言われている理由に、野外での作業になるため、天候や気温に左右されやすく、体調不良の危険性がある点が挙げられます。
特に真夏の時期のデバンニングは、コンテナに触れないほど熱くなっていて、熱中症で倒れてしまう作業員も多くいると報告されているため注意が必要です。
一方、真冬は氷点下での作業で怪我をすると大惨事になるため、暑さ対策、寒さ対策を徹底しなければ身体的なリスクに晒されてしまいます。
デバンニングのコツ
デバンニングのコツは、以下のとおりです。
- 体の中心で持つ
- 荷物と体を寄せる
- ラバー軍手を使用する
それぞれのコツについて解説します。
体の中心で持つ
デバンニングで荷物を持ち上げるときは、なるべく早く体の中心に持ってくるように意識してみると、体への負担を最小限に抑えることができます。
繰り返し搬送作業を行なっていると、体で覚えられるのですが、初めて荷下ろし作業に携わる人は、腕の力だけを使って荷物を持とうとしてしまいがちです。
しかし、腕の力だけでは長時間労働に耐えられなくなってしまい、疲労困憊になるため、体に寄せて体重に荷物を預けるようにしてあげると労力を軽減できるでしょう。
荷物と体を寄せる
1つ目に紹介したコツと似ていますが、パレットを置くときは極力コンテナ側に寄せることを意識して、荷物とパレットの距離を短くしましょう。
荷物とパレットの距離が遠いと、それだけで作業時間が伸びてしまい、1パレットで1分のロスがあれば、30パレットで30分の延長につながり、心身的に疲労が蓄積されます。
デバンニング作業に慣れてくると、無駄な歩数があることに違和感を抱きますが、初めてであれば、荷上げからパレットを積むまでに無駄な歩数がないか意識してみてください。
ラバー軍手を使用する
デバンニングでは素手や滑り止め軍手などを使わずに、ラバー軍手を用意するようにして手を怪我から守り、荷物の持ち上げを楽にサポートしてもらいます。
滑り止め軍手といってもデバンニングのような大きくて重い荷物を運ぶときには、グリップの力が弱くて、荷下ろしのたびに手袋がズレて疲労につながります。
また、簡単に破けてしまう可能性も高いため、作業をスムーズに進めるためにも、しっかりとした性能のラバー軍手を使用するようにしましょう。
コンテナの単位とは?
コンテナの単位は、「TEU(Twenty foot Equivalent Units)」で表すことができて、20フィートに換算してコンテナの個数を示します。
海上コンテナの場合、輸出入のために国際基準の構造が設けられていて、原則「20フィート」と「40フィート」が用いられていますが、20フィートコンテナを1TEUと呼びます。
一方、40フィートの単位は「1FEU(Forty food)」で表すことができますが、一般的には、「2TEU」と表記されることが多いため、両方覚えておきましょう。
コンテナ積み込み方法
コンテナの積み込み(バンニング)で必要なことは、以下のとおりです。
- スペースをフル活用する
- 荷物が破損しないような置き方を意識する
それぞれの項目について解説します。
スペースをフル活用する
コンテナ輸送は、一般的な宅急便とは異なり、重量制限がないため、コンテナのスペースをどれだけフル活用して、1度に多くの荷物を運べるかが重要です。
そのため、バンニング作業では、ただ荷物を積み込むのではなく、無駄なスペースが生まれないように配置設計を考えながらパズルのように組み合わせなければなりません。
実際に、自動車を詰め込む場合は、天井から吊り下げて、上と下の2段階に分けるなど創意工夫がされているため、専門知識があれば重宝されるでしょう。
荷物が破損しないような置き方を意識する
コンテナ輸送は、国際間での取引が一般的であるため、時間をかけて運んだにも関わらず、荷物が破損していたり中身が丸出しになっていると損害賠償になりかねません。
どのタイミングで破損が起こるかわからないからこそ、トラブルを避けるためにはバンニング作業中にできるだけスペースを作らないように敷き詰めることが求められます。
スペースを作らずに積み込み作業が完了すれば、輸送中に多少の揺れがあったとしてもコンテナの中の荷物に影響が出ることはないでしょう。
荷物でスペースを埋めることが難しいのであれば、緩衝材やからの段ボールなどでスペースを埋める方法もあります。
コンテナ積み下ろし方法
一般的なコンテナ(デバンニング)の積み下ろしは、以下の方法があります。
- フォークリフトを使う
- 人力で行う
それぞれの方法について解説します。
フォークリフトを使う
コンテナの中にある荷物が人の力では運べない重さや大きさのパレット積みや、重量物であれば、フォークリフトでの作業が採用されます。
機械の力を借りるため、人力で荷下ろしをするよりも断然体力的に負担が軽減されますが、荷物を破損しないための技術力や丁寧さが求められる方法です。
フォークリフトは「フォークリフト運転技能講習修了証」の有資格者のみが使用できるため、デバンニングの仕事を検討している方は資格の取得を推奨します。
人力で行う
人力で荷下ろしをする場合は、多種多様なコンテナの荷物によって、バケツリレー式で軽くて小さい荷物を順番に下ろしたり、複数人で重い荷物を一緒に運んだりします。
基本的にデバンニング作業自体は、単純ですが、スピードが要求されるため、体力と力持ちであることが絶対条件で、慣れるまではきついことを想定しましょう。
ただ、とにかく人数が必要な作業でもあるため、常にアルバイト募集をしていて、経歴や学歴などが重視されず、すぐに働き始めることができる仕事です。
デバンニングは女性でもできる?
結論からお伝えすると、女性でもデバンニング作業はできるものの、実際に現場で働いている女性はほとんど見られません。
体力に自信があったとしても、体が小さいと大きな荷物をひとりで持つことが困難で、継続して働くことが難しい点が要因として挙げられます。
ただし、男性ばかりの現場だからといって女性が応募できないわけではありませんので、体力勝負であること、ほぼ男性であることに抵抗がなければ試してみても良いでしょう。
女性におすすめのデバンニング作業
女性がデバンニングの仕事をするのであれば、アパレルなどの軽量物を対象としているコンテナに携わって、仕事に慣れていきましょう。
また、デバンニング作業ではなく、ラップ巻き要員として女性が活躍しているケースはあるとのことです。
ただし、全ての現場でラップ巻き要員が求められているわけではありませんので、作業ポジションが設けられているか事前に確認する必要があります。
デバンニングについて理解しよう
この記事の結論をまとめると、
- デバンニングとは、輸送されてきたコンテナの中にある荷物を取り出す作業のことを意味している
- コンテナバンニングは輸送するためのコンテナに荷物を詰め込む作業であり、スペースを作らないように工夫が必要である
- コンテナバンニングの料金相場は、20FTコンテナで15,000〜25,000円、40FTコンテナで20,000〜50,000円
- デバンニングは、「スピード感」「重量の重さ」「野外での作業」がある点からきついと言われている
- デバンニングのキツさを解消するためには、「体の中心で持つこと」「荷物と体を寄せること」「ラバー軍手の使用」を意識する
- コンテナ積み込みでは、スペースをフル活用して、荷物の破損リスクを最小限に抑える必要がある
- コンテナ積み下ろしでは、荷物が重くて大きいのであればフォークリフトを使用して、それ以外は人力で行う
- デバンニング作業は女性でもできるものの、現場はほぼ100%男性が占めている
ということがわかりました。
海上輸送を行う国際物流では、バンニングとデバンニングの作業が必要不可欠です。
初めて積み込み、荷下ろし作業に携わるのであれば、いつくかのコツを意識して、できるだけ体力を温存しつつ、スピーディーに作業ができるよう工夫してみてください。
資格を持っていれば、人力ではなくフォークリフトを使った作業に携わることができるため、肉体疲労を最小限に抑えられます。