貿易業界でたびたび用いられている「ドレージ」は、海外貿易によって輸入した荷物を特殊な方法で運ぶことを意味します。
一般的な輸送とは何が異なるのか、メリットとデメリットには何があるのか、費用、業者、ドレージが確保しにくいといわれている理由について分かりやすく解説します。
これから物流業界で働こうと考えている方、ドレージ貿易を検討している方、貿易業界用語の理解を深める必要がある方はぜひ参考にしてみてください。
ドレージとは?
「ドレージ」とは、海外から輸送されたコンテナが港に着いたとき、通常は港でデバンニング(荷下ろし)するところ、コンテナに入れたまま陸上輸送することです。
コンテナのサイズは20フィート(約6メートル)と40フィート(約12メートル)のため、それらをトラックの頭の部分に繋いで運び、配送先でデバンニングをおこないます。
税関検査は、コンテナ丸ごとおこなうケースと、コンテナから荷物を取り出しておこなうケースと異なりますが、輸送業務に必要な時間とコストの削減に有効です。
ドレージ貿易のメリットとは?
ドレージ貿易のメリットは、以下のとおりです。
- コストを抑えられる
- 輸送にかかる時間を削減できる
それぞれのメリットについて解説します。
コストを抑えられる
ドレージ貿易をおこなうと、デバンニング作業が必要ないため、物流コストを最小限に抑えられる点がメリットとして挙げられます。
通常、港でのデバンニング作業は2時間以内と決められていますが、それ以上の時間がかかると30分〜1時間ごとに追加の人件費が発生するため、高額になりがちです。
ドレージ貿易では、デバンニングに必要な作業員の人件費、手数料、タイムオーバーによる追加料金の支払いが不要なため、コストダウンが期待できます。
輸送にかかる時間を削減できる
ドレージ貿易をおこなうと、デバンニング作業が必要ないため、港からすぐに配送先に荷物が運搬されて輸送のトータル時間を最小限に抑えられる点がメリットとして挙げられます。
デバンニングをおこなうのであれば、コンテナから荷物を取り出す、荷物を荷台に載せる、荷物を積み替えトラック・配送車両に運ぶなどの作業時間が発生します。
海上輸送の場合は、海外から輸入するだけでも時間を要するため、少しでもタイムロスを防ぎたいのであれば、ドレージの採用を検討しましょう。
コンテナドレージの費用とは?
コンテナドレージの費用は、ラウンド(往復距離)やドレージ会社によってまちまちですが、おおよその基準は、以下のとおりです。
- 東京〜北関東:50,000〜70,000円
- 東京〜静岡:60,000〜120,000円
※往復距離で計算されるため、東京から静岡まで100kmの輸送を希望した場合は、往復の200kmで料金が設定される
上記の料金に加えて、コンテナの総重量が20トン以上になる場合、コンテナを積載するためのシャーシ(タイヤが通常より2つ多い3軸シャーシ)料金が追加されます。
近年では、慢性的な人手不足とドレージ不足によって、料金が高騰しつつある傾向にあるため、正確な料金はフォワーダーに確認する必要があります。
ドレーコンテナとは?
ドレーコンテナとは、通常のコンテナとほとんど意味は同じで、海上輸送に使用されたコンテナが陸上輸送されるときに言い換えられます。
言い換えをしているものの、コンテナ自体は20フィートもしくは40フィートのもので、変わりはありませんので、「コンテナ」と言っても通じるでしょう。
陸上輸送するときのコンテナを「ドレーコンテナ」と呼んでいるため、海上輸送されてきたコンテナのことを「ドレーコンテナ」と呼ぶと意味が通じなくなります。
コンテナドレージ業者
コンテナドレージ業者は、以下のとおりです。
- 十和運送株式会社
- SBSリコーロジスティクス
- 東京ドレージサービス株式会社
それぞれの業者について解説します。
十和運送株式会社
十和運送株式会社は、50年以上の運営実績を持つ物流業であり、現在は全国に20拠点を構えて、500名以上の従業員を抱えている大手運送会社です。
営業時間 | 平日8:30〜17:30 |
問い合わせ方法 | 電話WEB |
電話番号 | 0297-52-6711 |
物流・運送委託を依頼するうえで「より安く」にこだわる方も多いかもしれませんが、十和運送株式会社は、クライアントの理想を叶える最適なプランを提供する特徴があります。
荷物の取り扱い、トラックの止め方、書類記入など大きいことから細かいことまで入念に従業員育成をしているため、安心して仕事を依頼できて、リピーターも多いです。
SBSリコーロジスティクス
SBSリコーロジスティクスは、ドレージ不足が深刻化している問題を受け止め、円滑なビジネスと安心安全を確保した運搬を約束している物流会社です。
営業時間 | 平日9:00〜17:45 |
問い合わせ方法 | 電話メール |
電話番号 | 050-1741-3138 |
精密機器、通販物流、オフィス物流、機械部品物流など多種多様な品目の物流を扱っているため、蓄積されたノウハウによって安心安全なドレージを保証します。
さらに、輸入したコンテナは港に返却せず、輸出用コンテナとして再利用する「ラウンドユース」に対応しているため、コンテナ不足解消、CO2削減の効果が期待できます。
東京ドレージサービス株式会社
東京ドレージサービスは、東京港を拠点にして海上コンテナ輸送をおこなう比較的新しい物流会社です。
営業時間 | |
問い合わせ方法 | 電話メールFAX |
電話番号 | 03-6433-1552 |
東京ドレージサービス株式会社が保有している牽引車は、以下のとおりです。
- 三菱ふそうトラクター(6台)
- いすゞ自動車トラクター(5台)
- 40フィート三軸コンテナシャーシ(8台)
- 40フィート三軸コンテナシャーシ(9台)
- 20フィート三軸コンテナシャーシ(2台)
40フィートのコンテナにも対応しているため、大きなコンテナをドレージしたいときに検討してみてください。
ドレージを確保しにくい背景とは?
ドレージを確保しにくい背景とは、以下のとおりです。
- トレーラー不足
- 人材不足
- ターミナル等の混雑
- コロナによる制限
それぞれの背景について解説します。
トレーラー不足
今までは海上輸送されたコンテナをそのまま港でデバンニングするのが一般的であったこともあり、大きくて重いコンテナを陸上輸送できる牽引機が足りていないのが現状です。
コンテナの総重量が20トン以上になる場合は、車輪の多い牽引機を用意しなければいけない規定もあるため、さらに特殊な牽引機が必要です。
コンテナの数が多かったり、総重量が20トンを超えるトレーラーをドレージしようと考えているのであれば、トレーラーを早めに確保しておく必要があります。
人材不足
どの業界でも慢性的な人手不足が問題視されていますが、ドレージをおこなうドライバーが年々引退しているのに、新しい人材が入ってきていないのが現状です。
一般的に、20フィートは40フィートよりも30%ほど安価に料金設定されていますが、ガソリン高騰や割に合わないという理由で20フィートの輸送を行わない業者が増えています。
また、20フィートであっても40フィートと同じ料金を請求するケース、ガソリン料金を上乗せで追加請求するケースなども増えていて、費用高騰の原因となっています。
ターミナル等の混雑
海上輸送は大幅にタイムスケジュールが変動しやすいため、ドレージドライバーが港で6〜7時間ほど待機することも珍しくなく、ドレージの受注を制限する業者が増えています。
とくに、台風や大雨などの自然災害が起こった直後は、ターミナルが混雑しやすく、連日ドレージの手配ができないことから、寄行先を変更する業者同士で事故が起こります。
現状として、待ち時間の長さや事故のリスクに対して不透明すぎる給与設定もまた、人材不足の原因となっていて、ドレージのデメリットを引き起こす悪循環につながります。
コロナによる制限
コロナ禍によって、世界中の企業がビジネスのスピードを緩めたことをきっかけにドレージ業者の仕事が激減したことが、よりドレージ業務の人材不足を引き起こしました。
もともと、ドライバーの給与問題や、労働環境によって職を変えたり、新しい人材の流動が少なかったことは問題視されていたのですが、コロナによって職を無くした人も多いです。
コロナ禍が幕を閉じるとともに、世界間での貿易は盛んになりつつあるため、どれだけ人材が戻ってくるのかによってドレージ費用も変動することでしょう。
海上コンテナドレージとは?
海上コンテナドレージとは、ドレージと同様に、海外から輸送されてきた荷物をデバンニングすることなく、コンテナごと目的地まで陸上輸送する方法のことを指しています。
港でデバンニング作業をする場合は、作業員の確保と作業時間、商品の破損リスクが伴いますが、ドレージすれば時間、コスト、リスク面でメリットがあります。
ただし、海上コンテナドレージのためにはドレージ業者に依頼する必要があり、慢性的な人手不足とガソリン高騰によってかえって高くつく可能性がある点に注意してください。
コンテナドレージのデメリットとは?
コンテナドレージのデメリットは、以下のとおりです。
- 距離に応じて輸送コストが増加する
- 時間に制限がある
- ドレーを確保できない場合がある
それぞれのデメリットについて解説します。
距離に応じて輸送コストが増加する
コンテナドレージのデメリットとして、料金が原則ラウンド(往復距離)で設定されるため、距離が長くなるほど輸送コストが増加していく点が挙げられます。
例えば、片道50km輸送を希望するのであれば往復100km、片道100km輸送を希望するのであれば往復200kmの請求があり、距離が伸びるほど追加で支払う費用が高額になるのです。
最近では、ガソリンが高騰しているため、ラウンドによる基本料金に加えて、追加でガソリン代の請求をする業者も増えていて、総合的な支払額が大きくなりやすいです。
時間に制限がある
コンテナドレージのデメリットとして、ドレージ業者側がドライバーの労働環境を劣悪にしないために時間制限を設けて、対応してもらえない可能性がある点が挙げられます。
海上輸送の場合は、到着時間が前後したり、コンテナを下ろすまでの順番待ちで時間がかかったりするため、ドレージドライバーに負担がかかりやすいです。
業者側は、少しでもドライバーの負担を減らすために1つのコンテナに対して拘束できる時間を制限したり、超過時間に対して追加請求するなどの対処をしています。
ドレーを確保できない場合がある
コンテナドレージのデメリットとして、一度に複数のコンテナをドレージしたいときや20トン以上のコンテナがある場合はドレージ確保ができない可能性がある点が挙げられます。
もともと、輸入したコンテナを港でデバンニングするのが一般的であったため、コンテナを輸送できる牽引車の数が限られているため、繁忙期などは要注意です。
とくに、総重量が20トン以上あるコンテナを輸送するためには、通常よりも車輪の数が多い牽引車の用意が必要なため、よりドレーの確保がむずかしいです。
ドレージについて理解しよう
この記事の結論をまとめると、
- ドレージとは、海外から輸送されたコンテナをデバンニングせずに直接配送先までコンテナごと運搬することを意味する
- ドレージ貿易のメリットは、コストと時間を節約できる
- コンテナドレージの費用は、ラウンド(往復距離)とドレージ会社によってまちまちであるものの、東京〜北関東で50,000〜70,000円が相場と言われている
- コンテナドレージ業者として「十和運送株式会社」「SBSリコーロジスティクス」「東京ドレージサービス株式会社」がある
- ドレージが確保しにくいとされている背景には、「トレーラー不足」「「人材不足」「ターミナル等の混雑」「コロナによる規制」が関係している
- 海上コンテナドレージ、ドレーコンテナは、どちらも「ドレージ」と同じ意味であり、コンテナを配送先まで陸上輸送することを意味する
- コンテナドレージのデメリットは、「距離に応じて輸送コストが増加する」「時間に制限がある」「ドレーを確保できない可能性がある」がある
ということがわかりました。
ドレージにはメリットとデメリットがあるものの、代わりのデバンニング作業においても人材不足は問題視されているのが現状です。
コンテナの数や大きさに応じて、コスト、時間、労力などを比較して、ドレージかデバンニングのどちらが最適か検討してみてください。