転売やせどりで収益をあげることで、所得税や法人税などの税金がかかります。
個人事業主として収益をあげている場合、法人化(法人成り)することで支払う税金を抑えられる場合があります。
他にも、個人事業主としてできる節税対策を行うことで年間で払うべき税金が安くなるでしょう。
この記事では、法人化(法人成り)をすることで受けられるメリットについて紹介していきます。
また、法人化を進めるための手続き、法人化をする目安も合わせて紹介していくので、転売やせどりをしている方は是非参考にしてください。
転売・せどりの利益
転売やせどりで稼いだ収益には税金がかかります。
転売やせどりに限らず、商売で得た所得には税金を計算する義務があるのです。
税金の計算方法や法人の仕組みについて見ていきましょう。
法人とは?
そもそも、法人とは何でしょうか?
辞書によると、法人とは法律上の権利義務の主体とされるものです。
具体例を挙げると、株式会社などは法人の代表といえるでしょう。
株式会社以外にも合同会社や合名会社、合資会社など法人には様々な形態があります。
自然人以外のもので、法律上の権利義務の主体とされるもの。一定の目的のために結合した人の集団や財産について権利能力(法人格)が認められる。公法人と私法人、社団法人と財団法人、営利法人と公益法人・中間法人・NPO法人などに分けられる。
引用:法人|goo 辞書
法人に対して、法律用語で個人のことを自然人を呼びます。
法人が企業などの権利義務の主体として利益をあげるのに対して、自然人は個人事業主として利益をあげます。
- 法人:株式会社などの形態で利益をあげる権利義務の主体
- 自然人:個人事業主として利益をあげる権利義務の主体
転売とせどりの違い
「転売」と「せどり」はどのような違いがあるでしょうか?
どちらも商品を仕入れて利益を売るという商売であることに変わりはありません。
転売は限定品などを手に入れて高値で売るという行為です。
一方で、せどりは定価よりも安く商品を仕入れて販売するという行為を指します。
一般的に、転売は品薄の商品に利益を売る行為であり、法律などの規制対象になることもあります。
例えば、チケット不正転売禁止法では興行者の許可なくチケットを転売することは規制の対象となっているのです。
せどりでは商品を安く仕入れて付加価値をつけることで販売するため、法規制の対象になることは少ないでしょう。
個人事業主と法人はどう違う?
せどりで商売をするためには、「個人事業主」で商売をするか「法人」で商売をするかの2通りがあります。
個人事業主は小規模のビジネス、法人は大中規模のビジネスという考え方が分かりやすいでしょう。
個人事業主には所得税がかかる一方で、株式会社などの法人では法人税がかかります。
所得税と法人税にはそれぞれ有効な税金対策が異なります。
所得に関する税金が異なる
先にも述べたように、個人事業主と法人では税金を計算する種類が異なります。
個人事業主には所得税、法人には法人税がかかります。
所得税と法人税の計算方法は税率が異なるのですが、以下が税金を計算する根拠となる税率です。
所得税も法人税も累進課税、すなわち所得が多くなるほど税率が多くなる仕組みとなっています。
所得税の税率
所得税の税率は以下の表の通りになっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
控除額とは、所得金額に税率を乗じる前に差し引ける金額のことです。
例えば、所得金額が3,000,000円の場合には「3,000,000-97,500=2,902,500円」が計算のベースとなります。
2,902,500円に所得税率である10%を乗じて、290,250円という金額が支払うべき所得税という計算になります。
法人税の税率
法人の形態には様々ありますが、ここでは資本金1億円以下の株式会社を例に挙げてみましょう。
このケースでは、法人税率は800万円以下の部分と年800万円超の部分に分かれます。
年800万円以下の金額は法人税率15%、800万円を超える金額については法人税率23.40%で計算されます。
例えば、法人所得が1,500円の場合は「800万円×15%+(1,500万円-800万円)×23.40%=120万円+163.8万円=283.8万円」という計算です。
区分 | 税率 |
---|---|
年800万円以下の部分 | 15% |
年800万円超の部分 | 23.40% |
所得の計算方法
所得税、法人税の場合も計算のベースとなる所得を計算する必要があります。
このとき、課税の対象となる所得金額を「課税標準」と呼びます。
課税標準では1年間に得た所得から所定の所得控除を差し引いて計算するという計算式です。
法人化のメリットと目安
個人事業主が法人登記して法人となることを「法人化」あるいは「法人成り」といいます。
法人化をすることで以下のようなメリットを受けられます。
- 本人の給料を経費にできる
- 信用力が増す
- 有限責任
それぞれ、詳細を見ていきましょう。
本人の給料を経費にできる
法人化をすることで、事業者本人の給料を経費にできます。
自身への給与を「給与所得控除」として計上できるため、法人税計算が有利になるのです。
また、家族へ給与支払いを行う場合でも所得控除の対象となります。
所得控除を行うことで税金計算のベースとなる所得の金額が小さくなるため、節税効果に繋がるのです。
信用力が増す
法人化することで社会的な信用力が増すというメリットを受けられます。
特に、法人間の商取引では個人事業主として取引するよりも法人であることの信用が大きいでしょう。
また、個人を相手にした商売であっても株式会社などの法人であったほうが信用を得られるケースが多いです。
有限責任
法人化することで、事業に対して有限責任となれます。
有限責任とは、出資金額に対して責任を負うことです。
自分が出資した金額以上の責任を負う必要がないため、事業者が追う責任の上限を定められるのです。
個人事業主の場合は損害賠償を起こしてしまった場合に、多額のリスクを負う点に注意しましょう。
法人化をした方がいい目安
法人化をした方がいい事業規模の目安はいくらぐらいでしょうか?
個人事業主にかかる所得税は累進課税で所得が増えるたびに税率が高くなります。
一方で、法人としてかかる法人税は800万円を超えると一定の税率となります。
法人化するための手続きの手間なども考慮しなければなりませんが、法人化をするべき所得の目安としては500~700万円が目安となっているようです。
500~700万円が目安
法人化をしたほうが良い所得としては、「500~700万円」という金額が目安となります。
理由としては、個人事業主にかかる所得税について「6,950,000円 から 8,999,000円まで」の税率が23%となり、法人税の税率に追いつくためです。
9,000,000円を超えると所得税が33%となり、法人税よりも多くの税金を支払わなければならなくなります。
法人化の手続き
法人化をするためには所定の手続きを経る必要があります。
法人の形態には「株式会社」のほかに「合同会社」などが一般的です。
ここでは、株式会社を例にして確認していきましょう。
法人の設立手続き
法人を設立するためには定款の作成、資本金の振り込み、登記が必要です。
それぞれの手続きについて、具体的な内容を見ていきましょう。
定款の作成
法人を設立するためには定款を作成する必要があります。
定款とは法人の組織・活動について定めた根本規則のことです。
定款を作成して役所に提出するには一定の手数料がかかります(数万円~10万円ほど)。
定款に記載が必要な事項について、法務局のページに記載例があるので確認してみてください。
資本金の振り込み
定款に記載した資本金の振り込みを行います。
資本金とは、会社が保有していて返済の必要がない資金のことであり、「自己資本」とも言われます。
なお、資本金には下限の設定がないため、資本金が1円でも会社を設立することが可能です。
資本金の大きさは会社の規模を表し、外部の金融機関などから信用力を高めることにも繋がります。
資本金の振り込みについては、金額や出資人が定款によって定められているため、定款の情報通りに資本金を振り込んだことを証明できるようにしておきましょう。
個人事業の廃業手続き
法人化をした場合、個人事業主としての事業は廃業することになります。
個人事業主としての廃業手続きを済ませましょう。
個人事業主が廃業するには、管轄の税務署に廃業届を提出します。
転売・せどりで利益を得た場合に税金対策のポイント
転売やせどりで利益を得た場合、適切な税金対策をしましょう。
例えば、確定申告をしっかり行うことで支払う税金が安くなる場合があります。
所得税の確定申告を忘れないようにする
個人事業主として転売・せどりの利益をあげている方は所得税の確定申告を忘れないようにしましょう。
所得税の確定申告とは、1年間で得た事業所得に関する税金を計算して報告するための手続きです。
確定申告をすることで、所得控除を受けられるなど所得税の計算でメリットがあります。
消費税の取り扱い
個人事業主、あるいはフリーランスの場合でも消費税を納める義務があります。
ただし、売上が1,000万円未満もしくは開業後2年以内であれば消費税は免除されます。
転売・せどりで法人化する場合は税金対策に注意しよう!
転売やせどりで利益を得た場合にかかる税金について確認しました。
所得税あるいは法人税はしっかりと節税対策を行うことで支払う税金の額を抑えられます。
個人事業主として利益を得ている場合でも、一定の所得がある場合は法人化(法人成り)することを検討してみてください。
法人化するには所定の手続きを経る必要がありますが、税金の額を抑えられる場合があります。
また、対外的な信用力も上がるため、ビジネスを上手く進められる可能性が高まります。
目安としては、500万円~700万円の所得がある個人事業主は法人化を検討する目安となっているようです。
転売・せどりにまつわる税金の仕組みについて理解して、ビジネスを成功に繋げていってください!