保税倉庫を使うメリットとは?輸入や通関する際の注意点をチェック

保税倉庫とは

保税倉庫は輸入品を正しく保管するための倉庫です。
保税倉庫を正しく利用することで、輸送コストや関税を抑えられるメリットがあります。

この記事では保税倉庫の活用方法や保税倉庫を利用するメリットについて詳しく紹介します。
また、保税倉庫を利用する際の注意点についてもチェックしましょう。

<この記事で分かること>
保税倉庫とはどんな設備?
保税倉庫を利用するメリットとは?
保税倉庫を選ぶポイントを知りたい
目次

保税倉庫とは

保税倉庫とは

保税倉庫とは海外から輸入した外国貨物等を一時的に保管するための倉庫です。
保税倉庫に預け入れた外国貨物等には関税の徴収が免除されます。

保税倉庫は、税関という国の行政が保税蔵置場の指定をしているため、安心して利用できる倉庫です。
ただし、関税の負担がないのは荷物を預け入れている期間に限られます。
保税倉庫から荷物を引き出す時は関税がかかるため、注意が必要です。

保税地域の目的

保税地域の目的は秩序ある貿易を維持し、関税の徴収を確保することです。

税関によると、保税地域の目的は以下の通り明記されています。

保税地域の目的は、輸出入貨物を法の規制下に置くことにより、秩序ある貿易を維持し、関税などの徴収の確保を図るとともに、貿易の振興及び文化の交流などに役立てることです。

引用:保税地域の目的|税関 Japan Customs

関税とは

そもそも、関税とはどういうものでしょうか?

関税とは「輸入品に課される税」であり、貿易をする際に支払う税金のことです。
海外から貨物を輸入する際、関税を支払う必要があります。

関税は古代から続いている慣習ですが、現代における関税は国内の産業保護が主な目的となっています。

【関税とは】
関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています。
関税は、他の租税同様、その収入は国庫収入となります。かつては、国家の財源として重要な位置を占めていました。国家間の経済交流が活発化し、貨幣経済が浸透する一方、国家の財政規模が巨大になり、国家の徴収体制が整備されるのに伴い、財源調達手段としての関税の意義は相対的に小さくなっていますが、厳しい財政事情の下でこれを適正に確保することは重要となっています。他方、関税が課せられると、その分だけコストが増加し、国産品に対して競争力が低下することから、関税の国内産業保護という機能が生まれます。現在では、この産業保護が重要な関税の機能となっています。

引用:わが国の関税制度の概要|財務省

日本国内の税関保税地域

日本国内にある税関管内保税地域は以下の通りです。

【日本国内の税関管内保税地域・承認工場一覧】
函館税関
東京税関
横浜税関
名古屋税関
大阪税関
神戸税関
門司税関
長崎税関
沖縄地区税関

首都圏をはじめ、港と近い場所にあります。

保税地域の種類

税関によると、保税地域には、以下5種類にそれぞれの機能があります。

種類主な機能蔵置期間設置の手続
指定保税地域
(関税法第37条)
外国貨物の積卸し、運搬、一時蔵置
例)コンテナヤード 等
1ヵ月財務大臣の指定
保税蔵置場
(関税法第42条)
外国貨物の積卸し、運搬、蔵置
例)倉庫、上屋 等
2年
(延長可)
税関長の許可
保税工場
(関税法第56条)
外国貨物の加工、製造
例)造船所、製鉄所、製油所 等
2年
(延長可)
税関長の許可
保税展示場
(関税法第62条の2)
外国貨物の展示・使用
例)博覧会、博物館 等
税関長が必要と認める期間税関長の許可
総合保税地域
(関税法62条の8)
保税蔵置場、保税工場、保税展示場の総合的機能
例)中部国際空港 等
2年
(延長可)
税関長の許可
出典:保税地域の種類と主な機能|税関

それぞれ関税法で要件が細かく指定しているため、保税地域を利用するには適切な手順を踏む必要があります。
関税法は関税の確定や納付・徴収、貨物の輸出入について定められている法律です。

また、保税地域では「外国貨物の積卸し、運搬、蔵置、加工・製造、展示」といった行為が可能です。

指定保税地域

指定保税地域は国や都道府県、市のような地方公共団体が所有する公共的な施設に設置するものです。

指定保税地域では公共性が高く、誰でも気軽に安く使えることが求められます。
そのため、複雑な流通加工はできず、蔵置期間も1ヵ月と短めです。

指定保税地域は税関所在地の近くに設置され、財務大臣の認可が必要です。

保税蔵置場

保税蔵置場は取引の円滑化と中継貿易の発展のために設けられた地域です。

税関長が許可した場合に設置可能で、外国貨物を積卸しまたは蔵置できます。
保管期間は原則として2年間ですが、届け出があれば延長も可能です。

保税工場

保税工場は、関税などを課さずに加工あるいは製造できる地域です。

税関長が許可した場合に設置可能で、外国貨物を加工または製造できます。
設置期間は原則として2年間で、製造の都合で延長することも可能です。

保税工場に保管している貨物には関税がかかりません。
外国貨物を加工・製造して販売する場合は保税工場で作業をしてから販売することで関税をかけずに外国貨物を加工販売できるのです。

【保税工場で加工できる貨物の例】
魚介類の缶詰、菓子、鋼材、電線、船舶、自動車、精密機械、土木機械、工作機械、石油製品、繊維、農薬、化学製品、フィルム

保税展示場

保税展示場は、外国貨物を展示する会場です。

博覧会や商品の展示会に使用されます。
展示のために外国貨物に関税をかけずに簡易的な手続きで外国貨物を設置できます。

例えば、世界の最新自動車を展示する東京モーターショーは保税展示場の一例です。

総合保税地域

総合保税地域はこれまでにあげた保税地域以外の用途で使用される保税地域です。

輸入の促進や対内投資事業の円滑化を目的として簡易的な手続きによる外国貨物の設置が認められます。

保税倉庫を活用する4つのメリット

保税倉庫とは

保税倉庫を活用するメリットとして、以下4点が挙げられます。

  • 輸入貨物を安全に保管できる
  • 輸送コストを削減できる
  • 関税が発生しない
  • 外国貨物のまま流通加工できる

メリット1.輸入貨物を安全に保管できる

保税倉庫を利用する大きなメリットとして、入貨物を安全に保管できることが挙げられます。
保税倉庫は税関が指定する倉庫であるため、安全に輸入貨物を預けられるのです。

税関は国の行政機関であるため、いわば国のお墨付きともいえる倉庫を安心して利用できます。

ちなみに、税関は「輸出入貨物の通関」のほかに「密輸の取締り」「保税制度の運営」を取り締まっている国の行政機関であり、以下3つの目的を掲げています。

【税関の目的】
1.適正かつ公平な関税等の徴収
2.安全・安心な社会の実現
3.貿易の円滑化

メリット2.輸送コストを削減できる

保税倉庫を利用することで輸送コストや流通時間など、輸送コストを削減できるという点がメリットです。

保税倉庫では通関処理から検品、加工、保管、出荷まで一貫して対応しているため、貨物を移動させる必要がありません。
貨物を移動させる輸送コストや輸送にかかる時間を省けるため、流通コストの削減に役立ちます。

メリット3.関税が発生しない

保税倉庫に預け入れている貨物には、預け入れている期間における関税が発生しません。
また、消費税も発生しないため物流にかける出費を減らすことが可能です。

貨物に不良品が判明した場合や何等かの理由で引き取りができない場合、関税や消費税を負担せずに返金ができます。

メリット4.外国貨物のまま流通加工できる

保税倉庫に預け入れた荷物は外国貨物のまま流通加工ができます。

外国貨物のまま販売することもできるため、関税や消費税を負担せずに取引が可能です。
また、届け出があれば倉庫内での加工も可能できるため流通コストの削減に貢献します。

保税倉庫で輸入貨物を通関する手順

保税倉庫とは

保税倉庫で輸入貨物を通関する際は正しい手順で進める必要があります。
以下は、保税倉庫で輸入貨物を通関する手順の例です。

  • 搬入
  • 検査
  • 輸入申告・輸入許可
  • 出庫

保税倉庫での取引は法律で管理されているため、正しい手順で行わないと密輸扱いで罰則を受ける可能性があります。
注意事項を守って正しい手続きをしましょう。

倉庫へ搬入

保税倉庫が貨物を引き取り、倉庫へ搬入します。
搬入の手続きをする際には「外国貨物仮陸揚の届出」という書類が必要です。

審査・検査

搬入した貨物が法令等に違反していないかチェックするために検査を行います。

税関では関税法に基づいて、法令等に違反していないことを確認する必要があります。
所定の審査および検査によって安全性を確認された貨物でなければ輸入は許可されません。

検査を通過した場合に輸入は許可されます。

外国から輸入される貨物のなかには、我が国の経済、保健衛生又は公安風俗などに悪影響を及ぼす場合があり、これらの貨物については、それぞれの国内法令によって輸入の規制が行われています。
これらの法令の規制は、関税法の輸入の許可制と結びつけてその実効性が確保されることとなっています。
したがって、貨物を輸入しようとする場合において、関税関係法令以外の法令により輸入に関して許可、承認等を必要とする場合には、これら他の法令の規定に基づいて許可、承認等を受けて、輸入申告又は当該申告に係る審査又は検査の際にその旨を税関に証明して確認を受けなければ輸入は許可されません。
なお、法令の規定によっては、外国の政府機関等の証明等を取得していないと許可、承認が受けられないものもありますので、事前にこれらのことについて調べておく必要があります。

引用:(関税法第70条、関税法基本通達70-3-1)|税関

出庫

輸入の許可が下りた場合、関税を支払って荷物を出庫できます。
ここまでの手続きをすることで、はじめて「外国貨物」から「国内貨物」として扱われるのです。

保税倉庫を利用する際の注意点

保税倉庫とは

保税倉庫は国で管理されている倉庫であるため、決められた規則を守る必要があります。

保税倉庫を利用する際の注意点として、以下3つのポイントに注意しましょう。

  • 申告漏れに注意
  • 保管期間は2年間
  • 冷蔵品・冷凍品は食品衛生法の検査対象

注意点1.申告漏れに注意

保税倉庫を利用するためには適切な申告をする必要があります。
1つでも申告の手順を忘れてしまうと密輸扱いにされてしまい、罰則を受けてしまうため忘れずに申告をしましょう。

注意点2.保管期間は原則2年間

保税倉庫の預け入れ期間は原則として2年間(指定保税地域を除く)です。
届け出をすれば延長することもできます。

保税倉庫の保管期間には期限があるため、期限を超えて預け入れることがないようにしましょう。

注意点3.冷蔵品・冷凍品は食品衛生法の検査対象

冷蔵品や冷凍品は税関だけでなく、食品衛生法の検査対象ともなります。

食品衛生法は飲食による健康被害を防ぐための法律です。
食品や添加物等、食品に関する貨物を輸入する場合には「食品等輸入届出書」を提出し、許可を受けなければなりません。

食品衛生法は、販売の用に供し、又は営業上使用する全ての食品、添加物、器具、容器包装又は乳幼児用おもちゃの輸入について、そのつど厚生労働大臣に届け出なければならない旨を定めています。これらの貨物を輸入しようとする場合は、検疫所に「食品等輸入届出書」を提出し、食品衛生監視員から交付を受けた届出済印等が押なつされた「食品等輸入届書」を税関に提出し確認を受けて下さい。確認を受けた後でなければ輸入は許可されません。

引用:(関税法第70条、関税法基本通達70-3-1、食品衛生法第27条、第62条)|税関

保税倉庫を有効活用してコスト削減しよう!

保税倉庫とは

保税倉庫は輸入品を正しく保管し、関税を管理するために利用される倉庫です。

保税倉庫を正しく活用することで流通コストや関税にかかる出費を抑えられます。
特に、海外の商品を輸入する必要のある事業では保税倉庫を活用することがコスト削減のポイントとなるのです。

保税倉庫は国の行政機関である税関による管理を受けているため、所定の事務手続きをする必要があります。
手続きを怠ってしまうと罰則を受ける可能性があるため、注意しましょう。

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