在庫管理の現場で、ロケーション管理を徹底するかどうかは、倉庫内のモノを適切に把握できるようになるため、探し回る手間を省くために必要不可欠です。
メリットが多い反面、正しいポイントを抑えなければ、コストが高くついたり、効率が悪くなったり、従業員の労力が増えたり、デメリットにつながります。
そこで、この記事では物流におけるロケーション管理について解説したうえで、ポイント、メリットとデメリット、種類について解説していきます。
物流におけるロケーションとは?
物流におけるロケーションとは、宝庫内で商品や材料を保管する場所のことを指していて、保管場所の住所(アドレス)と同じような役割を果たします。
ロケーションをつけるときには、「どこに何が保管されているか」という情報をデータとして扱うためにコード化して在庫情報を確認できるため、探し回る手間が省けます。
倉庫内の商品や材料の情報がカーナビのようにロケーションマップとしてデータ化されていれば、商品の場所を早く見つけ出せるということです。
ロケーションの付け方のポイントとは?
ロケーションの付け方のポイントは、以下のとおりです。
- 色を使って視覚で認識できるようにする
- 通路に番号をつける
- 歩行順に合わせてロケーションづけをする
それぞれのポイントについて解説します。
色を使って視覚で認識できるようにする
物流のロケーションをわかりやすくするためのポイントとして、色を使って視覚で認識できるようにする方法があります。
色をつけることで、新しく現場入りした作業員も商品や材料を判別しやすくなり、配送ミスやどこに何があるか探す手間を最小限まで抑えられます。
ただし、番号と違って色の種類は限られているため、保管する商品や材料の種類が多い現場では、活用することが難しいです。
通路に番号をつける
物流のロケーションをわかりやすくするためのポイントとして、通路に番号をつける方法があります。
番号は、無限に仕分けができるため、保管する商品や材料の種類が多い現場では、取り違いや保管されているスペースを探す手間を省けます。
ただし、色と比べると遠くから見分けることが難しいため、番号の書かれている場所にピンポイントでいくために時間がかかる点がデメリットです。
歩行順に合わせてロケーションづけをする
物流のロケーションをわかりやすくするためのポイントとして、歩行順に合わせてロケーションづけする方法があります。
通路に番号をつける方法だと、作業員が一つずつ番号を確認するため、歩行速度が遅くなりがちですが、歩行順に合わせて番号を設定すると全速力で移動できます。
ロケーションを設定するメリット
ロケーションを設定するメリットは、以下のとおりです。
- 効率的に作業ができる
- 誰でも同じように動ける
- 事故防止につながる
それぞれのメリットについて解説します。
効率的に作業ができる
ロケーションを設定することで、保管されている商品や材料がどこにあるか把握しやすくなるため、段ボールの詳細を読む手間が省けて作業効率が高くなります。
種類別に保管する場所を分けておくと、作業員は必要な商品や材料のエリアまで直行して、ピッキング作業に進めます。
大きな倉庫ほど、蓄積されていくタイムロスが結果的に大きな損失に直結するため、ロケーションを導入するメリットは大きいです。
誰でも同じように動ける
ロケーションを設定することで、誰でも同じようにストックとピッキングの作業が行えるようになります。
倉庫作業では、ベテランだけではなく出勤頻度の少ない方や初めて作業に関わる人も同じことをするため、誰にでも分かりやすいシステムになってる必要があります。
ロケーションが分かりやすく設定されていれば、人材教育の指導がほとんど入らないため、作業員を確保できればすぐに作業を始めてもらえる点が強みです。
事故防止につながる
ロケーションを設定することで、作業員たちは商品や材料を探す必要がなくなるため、無駄な動きによる衝突等の事故を防止できます。
倉庫は、大きな荷物を運んだり、搬送車が走っていたり、常に危険と隣り合わせの環境です。
ロケーションを設定することは、作業効率をあげるだけではなく、不必要なところに作業員が入り込むことを防ぐため、作業員を守る効果もあるのです。
ロケーション管理の目的とは?
商品や材料を保管するときにロケーション管理をする目的には、作業効率の向上や紛失リスクの軽減があります。
多くの現場でロケーション管理を行う主な理由は、どこに何があるかを把握することで作業効率が高くなり、より多くの搬送ができるようになることが期待されます。
さらに、適切に商品や材料の位置を把握できれば、あるべきものがどこかに埋まって見つからない、再入荷しなくてはならないというリスクも抑えられる点が強みです。
フリーロケーションのメリットとは?
フリーロケーションは、固定ロケーションと比較されることが多く、「どこに何を置くか」が決められておらず、臨機応変に空いているスペースを利用できます。
固定ロケーションを採用した場合、スペースが余っていても保管に利用できないデメリットがあるため、より多くの保管ができるようになる点が最大のメリットです。
商品や材料の種類が少なければ、それぞれが混同してしまうようなこともないため、フリーロケーションの方法が適しています。
ロケーション改善のポイント
ロケーション改善のポイントは、以下のとおりです。
- 同時購入品を近くに配置する
- 保管場所の最適化
- 類似商品を離して保管する
- 出荷頻度に合わせた最適化
- 間口サイズを最適化する
- 適切なロケーション管理方法の検討
それぞれのポイントを解説します。
同時購入品を近くに配置する
ロケーションを設置するうえで、同時購入品を近くに配置すると、使用期限や賞味期限などを考慮してピッキング作業が行えます。
商品は、入荷されたものから出荷していくのが理想的なため、同時期に購入(入荷)したものをまとめておくことで、商品や材料の劣化を防ぎます。
特に、使用期限や賞味期限、消費期限などが設けられているものは、数字にシビアである必要があるため、気をつける必要があります。
保管場所の最適化
ロケーションを設置するうえで、どこに何を保管するか保管場所の最適化を行うことで、作業員の手間を減らすことができます。
複数の商品や材料を取り扱うのであれば、大きくて重いものを取り出しやすい場所に置いたり、ピッキング数が多いものを手前に置いたりするなどといった工夫ができるでしょう。
固定ロケーションの場合、一度決めた保管場所を後から変更することもできますが、都度全ての商品と材料の移動が必要なため、できるだけ最初の段階で適切に選ぶことが重要です。
類似商品を離して保管する
ロケーションを設置するうえで、商品や材料で見た目は似ているけれど全くの別物商品がある場合は、離して保管することでミスピッキングを防ぎます。
色や形、大きさなどが似ているものが同時に届いたりすることがありますが、出荷ミスをするとクライアントやユーザーからの信用を損なう原因となります。
出荷前には最終確認を行うため、間違って発送する可能性は低いですが、出荷準備中の取り間違いは、作業効率の低下にもつながるため、類似商品を離して置くことが賢明です。
出荷頻度に合わせた最適化
ロケーションを設置するうえで、保管する商品や材料を出荷頻度に合わせて適切な位置設定をすると、ピッキング作業がスムーズに行えます。
毎日大量の出荷がある商品や材料は、その分入荷されてくるため、入り口付近や搬送車で作業できる位置に保管場所を設けると作業効率が高まります。
また、出荷頻度が少ない商品や材料を奥に設置することで、ぶつかって傷つくようなトラブルも避けられるでしょう。
間口サイズを最適化する
ロケーションを設置するうえで、間口(倉庫の陳列棚のサイズ)は大きすぎず、小さすぎず、適切なものを用意することで最適化できます。
段ボールのサイズが小さい場合、いくつか敷き詰めることができますが、サイズギリギリの間口では、商品や材料を傷つけてしまう可能性があります。
出荷後のトラブルに見舞われないためにも、できるだけ商品と材料を傷つけることなく保管をして、ピッキング作業、出荷ができるように保管場所のサイズ確認を行いましょう。
適切なロケーション管理方法の検討
ロケーションを設置するうえで、固定ロケーションにするのか、フリーロケーションにするのか、2つを合わせたダブルトランザクションにするのか考えます。
種類が少ないのに固定ロケーションにしてスペースを無駄にしたり、たくさんの種類があるのにフリーロケーションにしたりして、ランダムに保管すると作業効率の低下につながります。
一概にどちらの方法が適していると断言することはできませんので、倉庫現場と保管するものに合わせて、どの方法が最適か検討しましょう。
ロケーションの種類
ロケーションの種類は、以下のとおりです。
- 固定ロケーション
- フリーロケーション
- ダブルトランザクション
それぞれの種類について解説します。
固定ロケーション
固定ロケーションとは、あらかじめ商品や材料ごとに保管する場所を決めて、作業する人が場所を把握できるようにする方法です。
メリット | デメリット |
どこに何があるかが明確一度覚えてしまえば探す手間を省けるシンプルでコストがかからない | 商品や材料の種類が多いと覚えるのが大変場所が空いていたも他のものを置くことはできない場所が足りなくなったら新たにスペースを設けるため、在庫探しの原因になりやすい商品や材料の入れ替えがあれば、置き場とスペースの変更が必要 |
メリットがあるものの、柔軟性が乏しかったり、最初に覚えることが多かったりするため、やや面倒なロケーション方法で、入庫作業がシステム化されていない現場で採用されています。
一度把握してしまえば、無駄足を最小限に抑えたうえ、システム管理をするための技術やコストが発生しないシンプルさが強みです。
フリーロケーション
フリーロケーションは、空いているスペースに商品や材料を保管していく方法です。
メリット | デメリット |
空いているスペースに商品や材料を置くことができるため、一つの倉庫により多くの在庫を確保できる商品や在庫の入れ替えがあっても変更する手間がかからない | どこに何が保管されているか完全に把握することが難しい |
きたものから順にランダムで商品や材料を保管していくため、種類が少なければ混乱する心配はほとんどなく、より多くの在庫を確保できるため魅力的です。
ただし、商品や材料の種類が多い場合、ランダムに保管してしまうことで、どこに何があるか把握できずに作業効率が下がるリスクが懸念されています。
ダブルトランザクション
ダブルトランザクションとは、ピッキングエリア(配送)を固定ロケーション、ストックエリア(保管)をフリーロケーションに明確に分配する方法です。
メリット | デメリット |
ピッキング効率が高まる商品や材料の種類と量が増えるほど、適用しやすい数日分の出荷量程度の在庫のみをピッキングエリアに保管するため、狭い場所にも収納できる | 補充作業が追加で必要なため、費用と労力が発生する作業が多くなるため生産性が落ちる可能性がある |
保管する人、商品や材料を移動させる人のほかに、ピッキングエリアとストックエリアに移動させる人やシステムを管理する人など、追加の人材が必要です。
ある程度、流動的に商品や材料の移動をおこなううえ、生産規模が大きい作業現場であれば、無駄なく効率化が実現します。
ロケーションについて理解しよう
この記事の結論をまとめると、
- 物流におけるロケーションは、住所のようなもので、保管倉庫に「何がどこにあるか」を把握するための役割を果たしている
- ロケーションの付け方には、「色」「番号」「歩行順」などの方法がある
- ロケーション管理は、作業効率の向上と紛失リスクの軽減が目的となっている
- フリーロケーションのメリットとして、倉庫のスペースを最大限活用できる点が挙げられる
- ロケーションの改善ポイントとして、同時購入品、保管場所、類似品、出荷頻度、間口サイズ、ロケーション管理方法を適切に選ぶことが求められている
- ロケーションの種類には「固定ロケーション」「フリーロケーション」「ダブルトランザクション」の3つがある
ということがわかりました。
アパレルや食品に限らず、建設、家具などさまざまな分野で商品や材料を保管する必要があるため、作業効率をあげるためにロケーションについて見直してみてください。
また、最近では通販の需要も高まりつつあり、翌日発送などスピーディーさが求められる場合は、ロケーション管理が機能しているかどうかが大きく関与します。
今一度、倉庫現場の環境が整っているか、改善の余地がないかをチェックしてみると、利益につながる可能性もあるでしょう。