物流業界でたびたび使われている「パレタイズ」という言葉は、パレットに荷物を積み込む作業のことを指しています。
ただ荷物を積み込むことができれば良いのではなく、効率性を重視したうえで、荷崩れが起こらないように慎重に積まなくてはならないため、高いスキルが求められます。
この記事では、パレタイズの定義、費用、方法を解説したうえで、パレタイズロボット、自動化のメリット、意識することに対するメリットを解説します。
パレタイズとは?
「パレタイズ」とは、簡単に説明するとパレットに荷物を積み上げる作業のことで、パレットから荷物を下ろす時の作業を「デパレタイズ」と呼んでいます。
段ボール箱、一斗缶などの硬質箱型形状のものから、ロール紙のような円筒形状のもの、形が崩れやすい袋形状のものまで、パレットに積む荷物の種類は多種多様です。
最近では機械化が進んでいるものの、予算やスペースの関係上、人力によって行われているケースも多く、多種多様な荷物をきれいに詰めるために高いスキルが求められます。
パレタイズの費用とは?
パレタイズの費用は、主に次の3つの方法によって費用形態が異なります。
メリット | デメリット | |
外注 | 費用が一定である | トラブルが起きた時の責任をとってもらえない可能性がある |
自社で人員確保 | 教育をすれば信頼できる作業員を確保できる | 人件費が高い |
機械化 | 人員不足や作業ミスの心配をしなくて良い | 初期費用とメンテナンス費用が高い |
どの方法を採用するかによってパレタイズの費用は変動しますが、工場や倉庫の規模や予算の中で最適なものを選ぶようにしてください。
パレタイズの外注契約をするのであれば、トラブルがあったときのアフターフォローをどこまで担うのかを入念に話し合っておくと安心です。
パレタイズの方法とは?
パレタイズの方法は、以下のとおりです。
- 窓積みレンガ
- 積みスプリット
- 積みダブルピンホール
- 積み交互列積み
それぞれの方法について解説します。
窓積み
パレタイズの窓積みレンガとは、レンガ積みの横向き部分を2列増やした状態で、各段180度向きを変えながら互いに重ね合わせていく方法です。
レンガを積むとき、荷物の短編部分が外側から少しだけ見えていて検品がしやすいため、カゴ車や正方形以外のパレットに罪つける場合に用いられることが多いです。
正方形パレットの場合、窓積みが可能な大きさであれば、ピンホール積みで1段あたり1つの荷物をつめて、外側からの検品ができるため効率化の向上につながります。
レンガ積み
パレタイズのレンガ積みとは、1つの段に縦と横の向きを混ぜつつ、段ごとの向きを180度で変えて積み上げていく方法です。
安定性が必要とされる袋形状の積み込みをする際には、頻繁に採用されています。
商品によっては、製造番号、製造年月日、製品名などが見えるように積み込みをするため、検品や保管の際の管理がおこないやすい点が強みと言えるでしょう。
スプリット積み
パレタイズのスプリット積みは、レンガ積みの応用版と言える方法であり、横向き部分に隙間を作って積み上げていく方法です。
あえて隙間を空けるというよりは、異なる形状の荷物を一緒に積み込むことで、仕方なく隙間ができるものであるため、実質レンガ積みと同じであると言えるでしょう。
隙間ができるのに無理矢理内側に埋め込んでしまうと、荷崩れの原因になるため、レンガ積みのように敷き詰めるのはやめておきましょう。
ダブルピンホール積み
パレタイズのダブルピンホール積みは、異なる形状の荷物を並べていくときに、中心部分に2つの隙間を作りながら積み上げていく方法です。
荷物とパレットの大きさによっては、他の積み方よりも1段ごとに1つずつ多く詰めるケースも見られ、積載効率の高さがメリットとしてあげられます。
ただし、積み込み方法の中でもトップクラスに複雑なため、手作業でダブルピンホール積みをおこなうのであれば、作業効率が下がるリスクを理解しておく必要があります。
交互列積み
パレタイズの交互列積みは、荷物をブロックのように並べた平積みを1段ずつ90度向きを変えて積み上げていく方法です。
比較的横向きの力が強いため、荷崩れしにくい点がメリットとしてあげられますが、荷物の形状によっては縦、横の長さが合わない場合があるため要注意です。
1段で並べたときに必ず正方形になる形のみが交互列積みできる条件ですので、形状によってはこの方法が適用できないケースがあります。
積み付け作業とは?
積み付け作業とは、トラックの荷台や輸送用コンテナなどスペースが制限されているときに、異なる形状と重さの荷物をうまく配置して積み込むことを意味しています。
計算したうえで、最適な積み付け作業ができれば、限られたスペースを最大限に活用して、1度の運搬で多くの荷物が運べるため、効率性の向上が期待できます。
積み付けを工夫することで、荷崩れの原因を防げるケースもあるため、トラブルを未然に防ぐという観点からも重要です。
荷崩れしない積み方のポイントとは?
荷崩れしないポイントは、以下のとおりです。
- 過積載をしない
- 偏荷重にならないようにする
- 貨物を固縛する
それぞれのポイントを解説します。
過積載をしない
パレタイズで荷崩れを起こさないためには、過積載をしないことが大切です。
段ボールや一斗缶などの硬質箱型形状で中身がしっかりと詰まっているのであれば、重い荷物を上から載せても問題ありませんが、円筒形状や袋形状は重さに注意が必要です。
破れやすいものを敷き詰めすぎたり、軽い荷物の上に重い荷物を乗せたりすることはないようにして、荷崩れが心配な荷物は少量ずつ運ぶようにしましょう。
偏荷重にならないようにする
パレタイズで荷崩れを起こさないためには、偏荷重にならないようにすることが大切です。
1段の上下左右で重さや大きさ、高さが偏りすぎると、荷崩れだけではなく変形や破損の原因に直結するため気をつけてください。
できるだけ同じような形状、重さの荷物を一緒に運ぶようにして、異なる形状のものを同時に運ぶ際は、敷き詰めすぎずに隙間を作るようにしましょう。
貨物を固縛する
パレタイズで荷崩れを起こさないためには、貨物を固縛することが大切です。
積み上げや運搬の作業は、スピード感が求められますが、スピーディーさを意識しすぎた結果、荷物を倒したり、破損させてしまっては本末転倒です。
安全に運搬作業を完了するためには、不安定になりやすい荷物ほど頑丈に固縛をするようにして、多少の揺れでも荷物を維持できるようにしましょう。
パレタイズロボットとは?
パレタイズロボットとは、ハンドリングの過程の一つであるパレタイズ(積み上げ)やデパレタイズ(荷下ろし)の作業を担う産業用ロボットのことを指しています。
作業員に大きな負担がかかりやすい重量物を取り扱う現場では、多くのメリットがあるため規模の大きい工場や倉庫であるほど導入されています。
しかし、ロボットを購入する初期費用やメンテナンス費用が高くつくため、ロボットを導入することで利益が出るかどうかを把握しておく必要があります。
パレタイズを自動化するメリットとは?
パレタイズを自動化するメリットは、以下のとおりです。
- 現場作業員の負担軽減
- 積み込みミスの防止
- 生産性向上
それぞれのメリットについて解説します。
現場作業員の負担軽減
パレタイズを自動化するメリットとして、現場作業員の負担軽減が挙げられます。
パレタイズは荷物の種類によっては作業員の肉体的な負担が大きいため、自動化するだけでロボットのシステム管理のみで作業が完了し、負担を大きく軽減します。
現場によってはパレタイズによる事故なども報告されていますが、自動化して現場にいる作業員が減れば、事故の件数も減ることが期待できるでしょう。
積み込みミスの防止
パレタイズを自動化するメリットとして、積み込みミスの防止が挙げられます。
人がパレタイズをおこなうと、どうしても人為的なミスが起こり得ますが、システムによって管理されている自動化機器を導入すれば積み込みミスがなくなります。
ただし、システムの設定自体をミスしたり、電源が落ちるなど、技術的なミスが起こったときは、大幅に作業が遅れてしまうリスクがあることを把握しておきましょう。
生産性向上
パレタイズを自動化するメリットとして、生産性向上が挙げられます。
人力であれば重い荷物ほど時間がかかってしまいますが、機器の場合、規定内のサイズや重さであればどんな荷物も同じスピードで作業を進められます。
作業効率が一定であるため、機器を導入することでほぼ100%生産性の向上が見込めるため、規模拡大を目指すのであれば自動化を検討した方が良いでしょう。
パレタイズを意識するメリットとは?
パレタイズを意識するメリットは、以下のとおりです。
- コスト削減
- 安全性の向上
- 省スペース化
- 製品の品質向上
それぞれのメリットについて解説します。
コスト削減
物流業務で、特に戦略やマニュアルなどを設けずに人数と時間をかけて積み込み作業をおこなっていたのであれば、パレタイズを意識することによってコスト削減が見込めます。
パレタイズには、荷物の形状や重さに合わせて最適な積み込み方法があるため、それらを実行することで今までよりも少ない人数と少ない時間でより多くの積み込みが可能です。
作業員の知識や経験が求められる作業にはなりますが、熟練の作業員が集まれば無駄な人件費を削減できて、利益につながるでしょう。
安全性の向上
物流業務で、作業員が怪我する事故や未遂事故を無くしたいのであれば、パレタイズを意識することで安全性の向上が見込めます。
作業現場は、大きな荷物や大きな機器が横行しているため、予想外の場面で作業員が事故に巻き込まれるケースは多く報告されていて、命の危機にも関わります。
パレタイズで作業員の動きに制限をかけたり自動化をして作業員の数を減らすことで、多くの事故リスクを軽減し、安全な現場を作ることができるでしょう。
省スペース化
売り上げが伸びたり、事業拡大のために荷物の量は増えたけれどスペースは増やせないというのであれば、パレタイズを意識することで省スペース化が見込めます。
パレタイズでは、狭いスペースをどれだけフル活用できるかという効率性を最優先にしているため、スペースは増やせないけれど荷物の運搬量を増やしたい場合にぴったりです。
ただし、自動化するために機器を導入するのであれば、最低限のスペースが確保できるか確認するようにしてください。
製品の品質向上
精度や品質にムラがあるという課題を抱えているのであれば、パレタイズを意識することで製品の品質向上が見込めます。
特に自動化でシステムを設定した機器にパレタイズを任せることで、荷物ごとの精度や品質に差異が生まれることがなく、全体的な品質向上につながります。
人力による作業は、それぞれの作業員の知識量や経験値によって大きく完成のレベルが変わってくるため、均一にするためには機器の導入が最適です。
パレタイズについて理解しよう
この記事の結論をまとめると、
- パレタイズとは、荷物を積み上げる作業のことで、荷物を下ろす作業のことをデパレタイズと呼んでいる
- パレタイズの費用は、外注、自社で人員確保、機械化などの方法によって変動する
- パレタイズの方法には、「窓積みレンガ」「積みスプリット」「積みダブルピンホール」「積み交互列積み」がある
- 荷崩れしない積み方のポイントは、「過積載」「偏荷重」「固縛」の3点を意識すること
- 作業員の負担を減らすためにパレタイズを産業用ロボット「パレタイズロボット」に任せる選択肢がある
- パレタイズを自動化するメリットとして「現場作業員の負担軽減」「積み込みミスの防止」「生産性向上」がある
- パレタイズを意識するメリットとして「コスト削減」「安全性の向上」「省スペース化」「製品の品質向上」がある
ということが分かりました。
パレタイズは、一見単純作業の繰り返しのように見えますが、効率の良いマニュアルを完備したり、自動化したりすることで、生産性が一気に高まることが期待できます。
また、同じスペースであってもパレタイズを意識することで今まで以上の荷物を積み込み、荷下ろしできるようになるため、場所問わず活用できる点が強みです。
物流業界でパレタイズをおこなっているのであれば、ぜひ参考にしてみてください。